カンヌ受賞の巨匠は脚本なし 主演の尚玄が明かす“その場で演出”の独特な手法

撮影中は台本もなかったと語る尚玄【写真:ENCOUNT編集部】
撮影中は台本もなかったと語る尚玄【写真:ENCOUNT編集部】

アジアの監督たちとタッグ「もっと交流して共同制作をしていけたら」

 撮影中は台本もなかったことから、どんな仕上がりになっているのかは、尚玄本人も分からなかったという。

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「ここもカットされているんだ、というシーンもありましたね。監督はこの映画を『ビター・スイート・メモリー』という言い方をしたんですね。振り返ったときに、悔しいことがあっても許せることもあるし、一生懸命にやった先が当初、目指したものと違っても、意味にあるものになっている。実際、直純はボクサー引退後の今、飲食の世界で大きな成功を収めています。コロナ禍になって、日本でも自殺が多いけれども、今いる環境が合わなければ、違う世界に行くことで、別の幸せが見つけられることもある。そんなメッセージも感じ取ってもらえれば」

 義足というハンディキャップも、劇中では必要以上に誇張されることもない。「お涙ちょうだい的なものは、僕らがやりたかったことじゃなかった。彼はたまたま義足ということで、日本では受け入れてもらえなかった。そういうミッシング・ピース(足りない欠片)は誰もが持っているものなんじゃないかと思います」。

 尚玄は今後も、アジアの監督たちとタッグを組み、自ら発信していく考え。「僕がこうした企画をやれたことで、もっと俳優が発信してもいいんだ、ということになってほしいですね。日本の映画界は世界で孤立している部分はあると思うんです。釜山でアジアの映画人と交流したときも、そんなことを言われました。すごいアジアのフィルムメーカーたちはいっぱいいるので、もっとアジアの人たちと交流して、コプロダクション(共同制作)をしていったらと思っています」。

 次回作では、エストニアのタリン・ブラックナイト映画祭グランプリと、SKIPシティ国際Dシネマ映画祭の国内コンペティション長編部門優秀作品賞などを受賞した「コントラ KONTORA」のインド出身・日本在住のアンシュル・チョウハン監督とタッグを組む。「今度の役は逆に、『運動禁止』と言われ、体脂肪を増やすようにしています。せっかく作った体がだんだん崩れていくのはやっぱり悲しいものがありますけども、やりがいのある作品になりそうです」。

 尚玄にとって新境地となりそうな次回作も楽しみだが、まずは「GENSAN PUNCH 義足のボクサー」の劇場公開が待たれるところだ。

□尚玄(しょうげん)1978年6月20日、沖縄出身。大学卒業後、バックパックで世界中を旅しながらヨーロッパでモデルとして活動。2004年に帰国、俳優としての活動を始める。05年、映画「ハブと拳骨」(主演)でデビュー。08年にNYで芝居を学ぶため渡米。映画「Street Fighter 暗殺拳」、ドラマ「デスノート」など、近年は映画「カム・アンド・ゴー」「JOINT」「親密な他人」に出演。日本と海外を行き来しながら邦画だけではなく、海外の作品にも多数出演している。

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