“三代目藤間紫”を襲名した女優・藤間爽子の決意 家元と女優「どちらも本気です」
祖母が大事にしていた“内側の部分”「私もそういう風になりたい」
――爽子さんは6歳の時に歌舞伎座で初舞台を踏まれ、その時の演目「鶴亀」でおばあさまの初代藤間紫さんと最初で最後の共演をされています。おばあさまとの思い出や、演技指導で覚えていることはありますか?
「これは本当に残念というか、悔しいことに、直接お稽古を見ていただいた経験があまりなくて。私は6歳から日本舞踊を始めて、祖母が亡くなったとき14歳でした。祖母も忙しい方だったので、なかなか直にお稽古を見てもらえる機会がなく……。祖母のお弟子さんに手ほどきを受け、できあがったものを最終仕上げで見ていただくことがほとんどでした。まだ幼かったというのもあって、“見てもらう段階”にもなっていなかった。今となっては、『今見てもらいたかった。聞きたかった。いろんな話を聞いてみたかったな』と思います」
――おばあさまのお弟子さんから受け継がれたのですね。
「古くからいるお弟子さんから、『おばあちゃんはこんなこと言ってたよ』『おばあちゃんはこう言ってたからこうしてみたら』と教わっています。『基本が大事』と常々言っていたそうです。『自分の個性や色をつけていくのはいいけど、基本が固まっていなかったらそれは個性でもなんでもない』とよく言っていたみたい」
――おばあさまの舞踊や演技から、「基本の大切さ」を感じますか?
「祖母はもちろん技術的なことも大切にしていましたけど、“芝居心”や“心の部分”、“内側の部分”をすごく大切にしていたらしいです。『単なる上部だけの振りごとになっちゃだめ』と。祖母のインタビュー映像なども見ると、『私は役が分かってないと覚えられないのよ。単に形だけで振りを見ても覚えられないのよ』と言っていました。ちゃんと(役を)理解して舞台に上がっていたんだなと思うと、私もそういう風にしたい。どうしてもお稽古していると、『うまく見せよう』と踊りだけを意識しがちですけど、そういった(内側の)ものも詰まっていないと、人の心って動かすことができないのかなと」