【電波生活】「ぶらり途中下車の旅」が長年愛されるワケ「取材で出会った人は絶対にカットしない」
ナレーション・小日向文世の魅力「本当にいい人です。人当たりが良くて庶民的」
視聴者に優しい番組だ。番組作りのこだわりもありそうだ。
「まず大人の視聴に耐えうる番組であること。大人の旅ですから旅人は必ずかばんを持っています。手ぶらで大人は出かけませんよね。旅先で何か買ったり、食べたりしたら必ず旅人自身がお金を払う。そうした映像にこだわっています。あとは流行にあまり敏感になり過ぎないけれども時代遅れにはならないこと。もう一つ、裏話をしますと、最近はディレクターが編集する番組がほとんどですが、この番組は編集マンを入れて第三者の目で見ながら編集しています」
確かにどの出演者もかばんを持っている。だが中身はどうか。
「入っています。財布やハンカチ、スマホ、折り畳み傘も。実はかばんは出演者の私物を使っています。番組は用意していません」
かばんで出演者のセンスを知る楽しみ方もできそうだ。こだわりは他にもあるという。
「取材先ファーストであろうよと言っています。出会った人、訪ねた店の方から会えて良かったと一生思われるように対応する。この番組に出会って幸せになれたと思ってもらうことを心掛けています。映像的に面白くなくても取材をさせていただいた人を、尺の微調整はありますが絶対にカットしません。面白いとか、面白くないとかは、こちら側の都合でしかないですからね」
取材相手に優しい番組。続いて柔らかな雰囲気のナレーションが魅力の小日向文世の舞台裏も聞いてみた。
「本当にいい人です。人当たりが良くて庶民的。飼っているメダカを僕らにくれたりします。ナレーションの原稿を前日に渡すと、お忙しい中でも必ず練習してきてくれます。俳優さんですからVTRを見ながら現地を一緒に歩いている気持ちになって演じてくれます。興味の持ち方が庶民的で『これ、おいしそう』『本当にすごいな!この方は』とか言っています。あと奥さんの話もよくしてくれます。奥さんのことが大好きで、練習を奥さんが一緒にやってくれるそうです。イントネーションが違うとか、いろいろ指摘してくれるそうです」
最後に今後の抱負を語ってもらった。
「大人の視聴に耐えうる番組を、奇をてらわずに王道を行きつつも時代の変化についていくことで長く続いてきたと思います。30年もたてば、見ていただく視聴者層も変わりますから。10代から高齢者まで誰が見ても安心してぼーっと見ていられる番組を続けたいです」
佐藤氏は「力が入っていない」と冗談めかしたが、穏やかに優しい気持ちで番組を作っていることが笑顔から伝わる。番組の温かなムードのゆえんに感じた。