松本まりか「悔しい1年」を告白 デビュー18年、“あざとさ”で手にした成功と葛藤
濡れ場シーンの演出にも挑戦「現場は80年代の撮影所が見事に再現されていました」
映画監督役も初めて。80年代の撮影所では怒号や罵声が飛び交い、あからさまな男尊女卑もある中、新人監督・花子は濡れ場シーンの演出にも挑戦する。
「内田監督の若いときの体験談が基になっているそうで、少しお話を伺いました。現場は80年代の撮影所が、見事に再現されていました。撮影所、ファッション、カメラ……全てが疑いようもないくらい完璧だったんです。キャストの方々が素晴らしく、面白い。情熱的で、ちょっと滑稽で、熱く、自分の欲望のままに生きている。そんな演技を間近で体感できる。ご褒美みたいな仕事でしたね」
罵声を浴びる経験はこれまでなかったのではないか。
「いえ、何度か現場で罵声を浴びせてもらっています、コテンパンでした(笑)。でも私を舞台に引き上げてくれた劇団☆新感線のいのうえさんのダメ出しは、厳しくもとても愛あるものでした。舞台『Cat in the Red Boots』(06年)に出演した際、いのうえさんからは、何度やっても違うとダメ出しばかり。期待に応えられず、ふがいなさに泣いて帰る日々でしたが、あの時の経験がこの作品でも生きたんじゃないかと思います」
幼いときに母親の愛情に恵まれず、その寂しさを表現にぶつける女性監督・花子役には共感する部分も多かった。「私の幼少期の家庭環境もそうでした。母が働いていたので、祖父母に育ててもらいました。寂しいっていう思いが、表現という欲求につながっています。女優と監督、その役職は違ったとしても、同じですよね。私も、自分の生い立ち、自分の中で抱えたものを表現という形で昇華させようとしている部分はありました。まだ、しきれてはいませんが、この1、2年はそういった場をいただけていますし、いつの日か昇華できるようにきちんと向き合い続けていきたいと思います」。
00年、鈴木杏、栗山千明、山田孝之らが出演したドラマ「六番目の小夜子」(NHK教育)でデビューしたが、役に恵まれなかった。それが18年、仲里依紗主演のドラマ「ホリデイラブ」(テレビ朝日)でヒロインの夫を誘惑する、あざとかわいい井筒里奈を演じ、一気にブレークし、SNSのフォロワー数が急増した。