コロナ変異株が猛威をふるうなか、首都圏では中学入試が本格的にスタートした。超難関の御三家を目指す受験生とその保護者の間で超人気の前受け校（すべり止め校）が私立の栄東中学（さいたま市見沼区）だ。中学受験を描いた日本テレビ系10月期ドラマ「二月の勝者-絶対合格の教室-」に登場した架空の「埼玉西中学」のモデルとなった学校として全国的に知られている。“すべり止めの星”と呼ばれ、毎年1万人以上が入試に挑む全国最多のマンモス受験校の朝を取材した。（※児童、保護者への声掛けは控え社会的距離を保つことに留意して取材をしています）

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　栄東中では10日、A日程（東大・難関大クラス、特待生入試含）の初日入試が行われた。同校が発表した8日現在の出願者数はA日程（選択制）の10日4710人、11日2319人。東大特待の12日1364人（内訳は4教科1212人、算数1教科152人）、B日程（帰国生Bを含む）の16日2350人、東大IIの18日496人。合計で延べ1万1239人に上る。この日、最寄り駅のJR東大宮駅へ都心から向かうJR各線の電車は路線によって混雑ぶりが異なった。

　筆者が午前7時39分池袋発川越行き埼京線に乗車したところ、受験生とその保護者と見られる親子連れで非常に混雑しており、1メートル以上の距離が保てないほど。受験生はリュックに「学業守り」「合格祈願」と書かれたお守りをぶらさげているから一目瞭然だ。赤羽駅で電車を乗り換えてみると、意外なことに今度は車内が空いており、立っている受験生は見かけなかった。みなロングシートに座って過去問題集や参考書、自作ノートを見返すのに余念がない。一方、父親の肩に寄りかかってぐったりしている男子の姿もみられた。さらに浦和駅で別の電車に乗り換えたところ、こちらも大混雑というほどではなかった。

　間もなく東大宮駅到着というタイミングで「安全のため速度を落とします」という車内放送が流れた。駅到着後、駅員に聞くと「栄東中の入試でホームが大混雑するためです」と説明。普段より多くの駅員が出動して乗客の誘導にあたっていた。東大宮駅から栄東中までの歩道はやや混雑しているものの、みな適度な距離を取りながら歩いていた。交差点の赤信号前では行列が100メートルほどに膨れ上がったが、青信号に変わると流れが進んで大行列も解消され10分ほどで校門に到着した。

　スムーズに学校に到着した理由としては人波の分散があげられる。A日程を10日と11日の選択制とし3会場（本校・栄北・埼玉栄）に分けたこと、さらには10日の入試も前半（午前9時入室）と後半（同10時入室）に分ける時間差受験としたことで密になる状態を極力避けた。会場の入り口では、受験生一人一人に対してサーモグラフィーカメラ（歩行者を止めないタイプ）での検温を実施。さらに教室内のすべての机にアクリルパネルを設置するなどコロナ禍での入試実施に立ち向かう学校側の配慮が感じ取れた。

　同校の入試で話題となっているのが、校門横に設置された受験生に向けた大看板だ。そこには「受験生の皆さんへ　受験してくれてありがとうございます！　コロナに負けず頑張ってください　桜咲く4月にお会いしましょう！　教職員一同お待ちしています！」と書かれており、笑顔を浮かべる生徒のイラストにほっこりする。温かい激励の言葉に感激したのか、子どもを試験会場に送り届けた父親や母親がしきりにスマホで写真を撮っていた。守衛によると入試の際、この看板は毎年登場するが、デザインは少しずつ変えているそうだ。また、控室やトイレなど保護者に向けた案内書を配布していたのは同中学の学生たちだ。教職員と生徒が一丸となって受験生を応援しているようだった。

　この日の入試は午前9時集合。同9時10分から諸注意の告知があり、国語（50分）、算数（50分）、社会・理科（計50分、どちらから解答を始めても可）というスケジュールで各試験が行われた。募集人数は140人だが、大量の合格者を出すため実質倍率は例年1.5倍前後で推移している。得点開示があるため模試の代用としてお試し受験する生徒も多い。A日程の合格発表は12日午前10時。合否のほか各科目の全受験生平均点、受験生の得点、順位、東大クラスと難関大クラスの合格最低点がデータとして提供されるため、他の難関中学を受験する際の目安となる。また最終の入学金支払いは御三家や準難関校の合否結果が出そろう2月7日まで待ってくれるというところも人気の理由だ。

　栄東高校の2021年大学合格者数は東大12人、京大2人、早稲田大123人、慶応大95人、早慶上理合計422人。“すべり止めの星”という呼び名だけではうかがい知れない実力校と言えるだろう。