【Producers TODAY】紅白出場YOASOBI 出版Pが明かす関連書籍大ヒットの理由は“短尺”“デジタル融合”“アジア”
アジアのエンタメ企業との協業が日本の出版業界の急務
――グローバルコンテンツということでは韓国のエンタメ作品が人気を呼んでいます。世界市場で存在感を示している韓国コンテンツとの“掛け合わせ”については何か考えがありますか? 実際、双葉社は韓国WEB漫画原作の「地獄が呼んでいる」全2巻の日本語版権を購入し出版しました。
「私自身はといえば、ネットフリックスなど動画配信サービスで韓国ドラマの『ヴィンチェンツォ』『地獄が呼んでいる』『イカゲーム』『ムーブ・トゥ・ヘブン:私は遺品整理士です』『シーシュポス:The Myth』などを見ました。どの作品も非常に面白く、今後の小説作りに役立てるために韓国ドラマのストーリーがどのように作られているのかを研究してみたいと思いました。世界的に人気を呼んでいる韓国のコンテンツとの掛け合わせということでいえば、一緒に原作開発したコンテンツを音楽にしたり、ネットフリックスでドラマ化や映画化をして世界に向けて配信していくことができないかと考えています。どの韓国ドラマも俳優の演技が大変に素晴らしいのですが、その一方で脚本のクオリティーも世界一といえるぐらい素晴らしい。世界基準での大ヒットを当初からしっかりと見据えた脚本作りが、『イカゲーム』や『地獄が呼んでいる』のような世界的な爆発的大ヒットにつながっているのだと思っています。そのあたりを私たちも真摯に勉強しコラボさせていただくことで、世界的な小説作品×映像作品を近い将来発表できればと思っております」
――その場合、日本の出版業界が持っている強みとは何でしょうか?
「ストーリーがしっかりとした小説を作り出せるところがもちろん強みですが、それだけではなくIP(インテレクチュアルプロパティ)力、つまりコンテンツとしてキャラクターまで作り出せるところが日本の出版業界が持つ最大の強みではないでしょうか。私たちが持つIP化のノウハウは海外のアーティスト事務所、エンタメ企業、プラットフォーム企業にとっても大きなメリットになるはずだと考えています」
――今後、日本の出版業界はどのように変化していきそうですか?
「YOASOBIさんとのお仕事を経験させていただいたことで、初めてのチャレンジも多く大変に勉強になりました。また、多くの出版社にとって漫画が大きな収益になっているのは確かですが、その漫画自体、ストーリーから始まり、ストーリーがいかに大事かということをこのたびのプロジェクトを通じて改めて再認識しました。YOASOBIさん、並びにスタッフの皆様には心より感謝いたしております。今後も出版社にとってまずはストーリーをしっかり作ることが非常に重要で、秀逸なストーリーができればテクノロジーとの掛け合わせでメタバースのコンテンツにも広がり、つながるようになっていきます。さらには国内市場が小さくなっていく中でグローバル市場で収益を上げていく仕組みも出版業界にとって非常に重要だと考えています。先ほども申し上げましたが、韓国や中国、台湾、タイ、インドなどの大手企業と組んでストーリーコンテンツを共同制作し小説化、楽曲化、映像化した作品をグローバル市場で売っていくといったアジアをはじめとする海外エンタメ企業との協業プロジェクトや企画開発が、今後の日本の出版業界にとって急務となりそうです」
□渡辺拓滋(わたなべ・たくじ/双葉社 編集局次長・統括編集長) 東京都出身。早稲田大学卒業後、双葉社入社。出版プロデューサー兼編集者として有名人の本を数多く手掛け、書籍と雑誌で累計500万部を売る。出版を通じて政治家や起業家、芸能人、アーティスト、スポーツ選手のプロデュースを多数行っており、代表作に乃木坂46・ファースト写真集「乃木坂派」、小泉純一郎元総理・写真集「Koizumi」、小池百合子都知事・写真集「YURiKO KOiKE」、「孫正義 2.0新社長学」、「羽生善治と藤井聡太 天才になる11の思考ルール」、サッカー日本代表・長友佑都「日めくりカレンダー」、のん「アニメ この世界の片隅にBOOK」など。女性ファッション誌「EDGE STYLE」編集長時代には「読者モデル」ブームを作り、NewsPicksでは「次世代エンターテインメント」の企画プロデュースなども担当。スポーツ界のメディアプランナーの仕事も手掛けており、2004年プロ野球1リーグ制「再編問題」が起こった際には、古田敦也・選手会会長の「決意」を出版し日本プロ野球界の「改革」に務めた。現在、日本サッカー界唯一のオピニオン誌「サッカー批評」統括編集長も務める。