外国人が消えた東京・山谷地区の簡宿街 コロナ2年目試練の年末 生き残り策に成果も

城北労働・福祉センター前には14階建てマンションが建設中【写真:ENCOUNT編集部】
城北労働・福祉センター前には14階建てマンションが建設中【写真:ENCOUNT編集部】

かつて「年末年始は100%外国人」 試練の値下げ

「安く売ってたくさん泊まってもらうっていう方向に方向転換しています。薄利多売にシフトしないと、今生き残ることは難しい」

 こう話すのは、カンガルーホテルの小菅文雄さん。山谷生まれの山谷育ち。40歳までデザイン関係の仕事をしていたが、転職。09年の本館に続き、祖父から継いだ旅館を16年に再生し、別館(SIDE B)をオープンした。

 山谷地区の中でもおしゃれな外観が目を引く。「インバウンドが年々増加している状況だったので、多くの人が利用しやすいような一般宿を目指しました」。狙いは当たり、経営は軌道に乗っていた。全室個室でリーズナブル、コロナ前は外国人にも人気の宿で、特に「年末年始は100%外国人でした」というほど。日本人の宿泊客も20代から30代が中心で、全体の7割が女性というのも大きな特徴だ。

 そんな小菅さんのもとにもコロナの波が押し寄せた。外国人は「月に1人か2人ぐらい。旅行ではなくて、日本に住んでいる外国人。インバウンドはないですね」。緊急事態宣言による外出自粛で日本人も離れた。「宿泊施設が供給過多になってしまっている。泊まるお客さんがいない」と状況は暗転した。

 さらに追い打ちをかけたのが、大手ビジネスホテルチェーンの戦略だった。コロナ禍で少しでも客室を埋めようと、1泊3000円台まで値下げするところもあった。これでは競合できないと判断した小菅さんは、宿泊料金を改定。それまで、最安3600円だったのを、今年4月には2300円まで値下げした。現在は時期にもよるが、2500円を最低ラインに営業している。「2500円という金額はかなりきつい。それでもやっていかなくてはいけない。今も低空飛行が続いています」と表情は険しい。

次のページへ (4/5) テレワーク用に部屋を解放できない簡宿の事情
1 2 3 4 5
あなたの“気になる”を教えてください