ブライダル業界“1兆円打撃”から復活のカギは? アナログからの脱却が焦点に
紙ベースの事務作業が長年のネック 一部リモート参加“ハイブリッド結婚式”導入も
今後のカギに挙げられるのが、デジタル技術の導入だ。早川氏は「ブライダル業界は、実はアナログなんです」と打ち明ける。
効率化として議論されるのが、紙ベースでの事務作業だ。「『結婚式は幸せだけど、準備が大変』とよく言われます。招待状一つとっても、誰を呼ぶかリストアップして、1人1人に手書きのはがきを送り、返事をもらい、忘れている人に連絡をして…。新郎新婦やウエディングプランナーにとって、実務が膨大になりがちです。オンライン招待状なら、デジタルフォームで感謝を伝えるムービーを添え、出欠席を募る方法もあります」と話す。ゲスト側にとっての“デジタル改革”もある。ご祝儀だ。電子決済サービスで事前に済ませてもらう方法も可能という。その一方で早川氏は「結婚式は伝統・文化の側面が強く、地域によっては独自の手法が根付いています。伝統と技術革新のバランスを見ることも大事なことです」と述べる。
リクルートが目指すのは、新郎新婦が結婚式を「幸せだけど大変、ではなく、幸せで快適」と感じられる世界だ。早川氏は「新郎新婦の結婚式準備を楽で効率的にすることが、翻ってプランナーの事務作業を効率化させることにつながり、本来最も重要な『結婚式のプランニング』に十分な時間を割けるようになります。結果的に、新郎新婦が最大限に自分たちらしい結婚式を実現できることになる。こうして結婚式の価値を高めることこそ、私たちが目指していることです」と語る。
プランナーをはじめ式場にとっては、データを活用したオンライン上での結婚準備が有効だ。価値観の多様化に伴い、結婚式のスタイルも“定番”がなくなってきている側面もあり、会場の飾り付けやアイテム選びなど準備段階において、デジタルを取り入れたプランニング提案は効率化が期待できるとのことだ。
同社では来年の秋冬を視野に、新郎新婦とゲストのやりとりを最適化できるサービスを構想中という。個別の企業単位での自社システムは運用されているが、包括的なプラットフォームの提供も検討。早川氏は「これからの結婚式の準備は『効率と濃密をどう選ぶか』になると考えています。デジタルの力を借りて作業の効率化を図ることで、新郎新婦がプロのプランナーとともに、理想の式を創り上げていく濃密な時間を増やすことを目指したい」と力説する。
くしくも、コロナ禍による社会変容で、各方面でデジタル導入が促進されている。実際に結婚式に一部リモート参加を取り入れる“ハイブリッド結婚式”も見受けられており、これまで遠方や自身の体調が理由で参加できなかったゲストもオンラインで出席できるように。結婚式やその準備にデジタルを組み込む動きはより一層注目されそうだ。
オミクロン株の出現により不透明ではあるが、国内では行動規制の緩和で、経済が回り始めている。ブライダル業界は“失われた1兆円”を取り戻せるのか。早川氏は「結婚式は人生の最大の節目だけに、多くの需要があることは確か。コロナ明けとなれば反動需要で一定数は戻ってくるとは思います。時代やコロナ禍によるスタイルの多様化にいかに対応できるか。数年先を見据えた中期的な戦略が重要」としている。