カンヌのようになれたはずが…第2回熱海国際が“もったいない映画祭”となったワケ

風で飛ばないよう石で留められたレッドカーペット
風で飛ばないよう石で留められたレッドカーペット

レッドカーペット&セレモニーは見たことがないシュールな光景

 6月28日のレッドカーペット&セレモニーは映画祭取材歴25年でも見たことがないシュールな光景が広がっていました。渦中の映画祭を取材しようと、20人以上のマスコミ陣が集結。その一方、映画ファンの姿はほぼ皆無。レッドカーペットイベントの寸前になって、2名のスタッフがレッドカーペットを敷き、海風で飛ばないように路傍の石で留め置くという次第。これは、実際の写真を見ていただいた方がいいでしょう。「カオス」「シュール」といった言葉を、画で現すと、こんな感じでしょうか。それでも、審査員を務める桃井かおりさんを始め、招待作品やコンペ作品のゲストたちが歩いていました。

「こんなドタバタの映画祭なら、やらない方がいい」との声もありましたが、それでは、全世界から長編・短編合わせて1300本以上の応募作から選ばれた作品たちが日の目を見ないことになってしまいます。コンペ部門の長編『夢幻紳士 人形地獄』の海上(うなかみ)ミサコ監督は「正直、開催されるかどうかは不安でした。でも、私たちにはチャンスだし、その機会を失いたくなかった。こうやって開催され、熱海の方々に映画を観ていただき、いろんな意見をいただき、よかったと思っています」と複雑な胸のうちを明かしてくれました。

海上ミサコ監督
海上ミサコ監督

『夢幻紳士 人形地獄』の海上ミサコ監督「私たちにはチャンス。機会を失いたくなかった」

 そんな監督たちの思いを、運営側はきちんと受け止めたのか? 努力は感じましたが、結果的には足りていなかったように思えます。上映情報の告知はほとんど行き届いておらず、初日の金曜の観客は約25人、2日目の土曜日は約40人。上映環境も万全ではありませんでした。『サンミ倶楽部ホール』での上映は、DCP(デジタル・シネマ・パッケージ、映画館のデジタル上映方式)ではなく、市販のブルーレイによるもの。事務局側の調整ミスのせいか、時折、画面から滲み、走査線のようなものも見えました。

 岡山天音が主演した短編『テロルンとルンルン』(宮川博至監督)は画質が悪い上、国際映画祭では必須の英語字幕はなし。上映後に、問い合わせると、「人的ミスで、バックアップ用のDVDを流してしまった。上映中に気づいたが、そのまま上映してしまった」とのことでした。突貫作業の映画祭だったとはいえ、もったいない。

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