変幻自在のHARASHIMAとパワーの岡林裕二 スマイルピッサリの激突は令和の名勝負【連載vol.70】

DDTのシングルリーグ戦「D王 GRAND PRIX 2021 Ⅱ」も優勝決定戦(12月5日、東京・後楽園ホール)を残すのみ。Aブロックを4勝1分と無敗で勝ち抜けた竹下幸之介と、混戦のBブロックを生き残った上野勇希がD王GP制覇を目指して激突することになった。

HARASHIMAをアルゼンチンバックブリーカーで担ぎ上げる岡林裕二【写真:DDTプロレス提供】
HARASHIMAをアルゼンチンバックブリーカーで担ぎ上げる岡林裕二【写真:DDTプロレス提供】

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 DDTのシングルリーグ戦「D王 GRAND PRIX 2021 Ⅱ」も優勝決定戦(12月5日、東京・後楽園ホール)を残すのみ。Aブロックを4勝1分と無敗で勝ち抜けた竹下幸之介と、混戦のBブロックを生き残った上野勇希がD王GP制覇を目指して激突することになった。

 奇しくも高校の同級生対決。高校生デビューを飾った竹下の勇姿に触発され、DDTに入門した上野。今では2人は同じDDTサウナ部「The37KAMIINA」で活躍し、竹下はKO-D無差別級王者としてDDTの頂点に君臨している。両者にはさまざまな感情が渦巻いていることだろう。

「僕たちにしかできない戦いがあるので、楽しみにしていて下さい」と竹下。2021年のDDTいや日本プロレス界に刻まれる好勝負になるのは間違いない。

 元より12戦士が参戦した今回のD王GPは激闘の連続だった。前年覇者の秋山準がまさかの開幕2連敗。3戦目にしてようやく初白星を挙げたもののブロック敗退するなど番狂わせが続出した。どの試合も素晴らしかったが、11・21後楽園ホール大会のHARASHIMAと岡林裕二の公式戦は本当にすごかった。

 DDTを守って来たHARASHIMAと大日本プロレス・ストロングBJの象徴である岡林。2人は20年の年越しプロレス「シャッフルタッグトーナメント」を制し、KO-Dタッグ王座を戴冠するなど、スマイルピッサリとして活躍。安定した実力、明るく元気なコンビで人気を博した。

 普段も団体の垣根を越えて仲が良く、連れ立ってサンリオの展示会に参加したり、食事会などでもいつも和気あいあいと交流している。

 タッグパートナーや気の合う者同士の対戦の場合、思い切り良くぶつかる好試合になるか、友情が先行し攻撃の手が鈍る、あるいは手のうちを知り尽くしているのでかみ合わない凡戦になるなど、両極端の場合が多い。

 初代タイガーマスク(佐山聡)と「虎ハンター」小林邦昭の抗争は、リング外では気の合う2人で、互いの実力を認め合っていたからこそ、数々の名勝負が生まれた。

 HARASHIMAと岡林も、私生活とリング上は別とばかりに、ショートしそうに火花散る激しいファイトとなった。負けず嫌いさく裂「柔」のHARASHIMAは変幻自在の動きで岡林を翻弄(ほんろう)し、「剛」の岡林は圧倒的な肉体を武器にパワーで攻めこんだ。

「令和の名勝負数え歌」への期待 鬼の形相が爽やかな笑顔に

 互いに一歩も譲らず、前へ前へ出る。意地のぶつかり合い。HARASHIMAの蒼魔刀、岡林はアルゼンチンバックブリーカーなど、双方が得意技を繰り出し、キックVSチョップの応酬もド迫力。30分があっという間に過ぎ去り時間切れ引き分け。何度でも見たくなる激戦だった。

 会場からは惜しみない万雷の拍手が鳴り響いた。コロナ禍で声援を送ることができないご時世なのがもどかしいと思ったファンも、さぞ多かったことだろう。

「いつかシングルやりたいね」「そうだね」「負けないぞ!」と、ニコニコと穏やかに杯を交わしながら誓っていた2人が、あんなに激しい攻防を繰り広げるとは恐れ入った。HARASHIMAは「試合はすごく楽しかった。体中痛いけど、岡ちゃんも痛いと思う。また組んでも闘っても!」と爽やかに笑い、岡林は「気持ちのいい闘いができた。また飲みに行きたい」と、こちらも底抜けの笑顔だった。

 鬼の形相でぶつかり合っていたのに、試合後は笑顔で健闘を称え合う。再戦を誓い、疲労困憊(こんぱい)の中でも晴れやかな表情でピッサリポーズ。これぞプロフェッショナルということだろう。

 引き分けだと「勝負がつかず残念」となりがちだが、この一戦は引き分けで良かったかも知れないとの思いが大きかった。何故なら再戦が楽しみだから。

 HARASHIMAと岡林の令和の名勝負数え歌。夢の続きを、いつかまたきっと見届けたい。

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