藤井4冠がガックリ肩を落としたJT杯決勝 豊島九段の妙手はどこに? 真田圭一八段解説

真田圭一八段
真田圭一八段

豊島九段がリードを奪った抜群の一手が…!

 その直後、藤井4冠に重要な分岐点が訪れる。55手目▲7二歩に対する飛車の逃げ場所だ。実戦は一目そう指したい△3一飛だった。だが、△2一飛と敢えて角筋に入る場所に逃げた方が良かったというのだから将棋は難しい。具体的には先手の飛車を成らせないためという理由だが、相当に指しづらい。

 本譜は61手目▲4五歩が抜群の味。歩が参加すると攻めの厚みが一気に増す。豊島九段がリードを奪った。その後、激しく藤井玉に迫るが、持ち駒を蓄え豊島玉をトン死させる筋を藤井4冠は狙う。それに怯まず駒を惜しまず豊島九段は攻めまくった。

 本局最後のハイライトは81手目▲3二同竜の局面。藤井4冠の駒台には溢れんばかりの駒がある。詰んでもおかしくない豊島玉だったが、右辺の守備陣が手厚かった。結局、豊島玉は詰まず、豊島九段がJT杯2連覇の大仕事を成し遂げた。

 本局に象徴されるように、豊島九段の強みは攻撃力と後ろに引かない姿勢だ。持ち味を発揮すれば藤井4冠を倒す力は十分持っている。2022年以降もこの2人の対戦は熱い戦いとなるだろう。

 藤井4冠は、敗れたとはいえ他方、王将戦の挑戦権を得て、全冠制覇に向けて着実に前進している。22年も藤井4冠を中心に棋界が回ることは間違いない。

トップページに戻る

1 2
あなたの“気になる”を教えてください