日本を代表する名バイプレーヤー、俳優歴60年の寺田農がなりたかった、もう一つの職業
健康には自信あり「酒もたばこも一切やめていない。だから、ストレスがないんだな」
その後は長年、実相寺監督と相米監督とタッグを組んできた。「実相寺は、役者は動く小道具みたいなものだから、サポートだけすればいい。相米とはいろんなことをやりましたよ。相米と実相寺の作品はどういう上がりになるのか、分からないから、ワクワク感もある。一緒に長い間遊んだっていうか、いい時間を共有したな。そういう意味では、監督というか、仲間には恵まれたなと思いますよ」。
主演と助演の違いは何か。「脇は台本に書かれてないから、そこで小細工したり、立体化していかなきゃいけない。その面白さもある。若いうちは大リーガーの大谷翔平じゃないけど、ストレートボールで勝負できるんだよ。でも、それがだんだん通用しなくなって、少し小細工を始めて、変化球になってくる。今じゃ肩も壊しているから、ストレートは投げられない。そんな状態なんで、この映画は全部、変化球かな(笑)」。
「耳は聞こえなくなるし、目も歯も悪くなったが」と明かすが、健康には自信がある。「生涯不良でいるには健康でいないとね。健康のためなら、死んでもいいという人はいるけど、健康に悪いことが大好き。酒もたばこも一切やめていない。だから、ストレスがないんだな。ただ、酒は飲まなくなっちゃったね。昔の仲間は死んじゃったからね」。ところで、美容師役を演じたことはあるのか? 「そういえば、ないな。やってみたいね!」。寺田は少年のように目を輝かせながら話してくれた。
□寺田農(てらだ・みのり)1942年11月7日、東京都出身。早稲田大学在学中の61年に文学座附属演劇研究所に第1期生として入所。65年、五所平之助監督の「恐山の女」で映画デビュー。同年には「青春とはなんだ」に橘公夫役として出演。俳優だけでなく、吹き替え、ナレーターなど幅広く活躍している。近年の主な出演作に、映画「嫌な女」「ミスミソウ」、ドラマ「水戸黄門 第2シリーズ」「大岡越前」などがある。