山田五郎氏「誰にでも同等なものではない」 13万円の絵画が510億円に変貌する理由とは

評論家の山田五郎氏とウェブ版「美術手帖」編集長の橋爪勇介氏が6日、都内で行われた仏映画「ダ・ヴィンチは誰に微笑む」(アントワーヌ・ビトキーヌ監督、26日公開)のトークイベントに登場した。

仏映画「ダ・ヴィンチは誰に微笑む」トークイベントに登場した山田五郎氏【写真:ENCOUNT編集部】
仏映画「ダ・ヴィンチは誰に微笑む」トークイベントに登場した山田五郎氏【写真:ENCOUNT編集部】

山田氏ぶっちゃけ「俺たちは面白いんだけどさ、美術に興味ない人は面白いのかな?」

 評論家の山田五郎氏とウェブ版「美術手帖」編集長の橋爪勇介氏が6日、都内で行われた仏映画「ダ・ヴィンチは誰に微笑む」(アントワーヌ・ビトキーヌ監督、26日公開)のトークイベントに登場した。

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 同作は、イタリアの美術家レオナルド・ダ・ヴィンチが描いた“最後の傑作”とされる「サルバトール・ムンディ」(通称:男性版モナ・リザ)が史上最高額510億円で落札された2017年の出来事をもとに、アート界のからくりや闇の金銭取引の実態などを生々しく暴くミステリー・ノンフィクションムービー。この絵はもともと、美術商が13万円で落札したものだった。美術商は「ダ・ヴィンチには“消えた絵”があり、それには救世主が描かれている」という説を思い出し、名もなき競売会社のカタログに掲載された絵画を見て第六感が働いたのだった。専門家の鑑定を経て「ダ・ヴィンチの作品」とお墨付きをもらったこの絵画は、ロンドンのナショナル・ギャラリーで展示される。この“最後の傑作”に大財閥や仲介人、コレクター、マーケティングマン、ハリウッドスター、某国の王子までが集まり、それぞれの思惑のために動いていく。

 今回は本作が公開されることを記念し、山田氏によるアート教養トークイベントが開催された。山田氏は東京国立博物館の評議員を務めており、西洋美術に造形が深い。会場には試写を見終わった観客が集まった。山田氏は開口一番、「俺たち(にとって)は面白いんだけどさ、美術に興味ない人は面白いのかな? ぶっちゃけ。我々的にはすごく面白かったけどね」と会場を笑わせた。「最近、美術のドキュメンタリーが増えているけど、『美術の裏側』がドキュメンタリー(の題材)として面白いってわかったんだろうね」と考察した。

 美術関連の仕事も多い山田氏には、よく聞かれる質問があるという。「1番嫌なのはね、『この絵はなんでこんなに高いんですか。510億円の価値があるんですか』って必ず聞かれるのね」と明かし、「価値って『誰にでも同等なもの』ではないじゃない? 『この値段でそれを買った人がいた』っていう以上のことはない。それでも『どうしてそんな値段になるの?』と思ったときに、この作品を見てほしいです」とPR。橋爪氏も「どうやって(絵画の)値段が上がって行くかなど仕組みが描かれている」と、13万円の絵画が510億円になったからくりが描かれている同作について説明した。

 またイベントの締めで山田氏は、「これ言ったらSNSで炎上するかもしれないけど」と前置きし、「前澤さんが絵画を買っていて、(その絵画が)“どこにあるの問題”があるじゃん」と、実業家の前澤友作氏について言及。前澤氏が米画家バスキアの絵画をはじめ世界有数のアートをコレクションしていることに触れ、「金持ちは、買った美術品をみんなに見せてこその金持ちだと思うんだよね。保存のことが気になるなら博物館や美術館に寄託して、みんなが見られるようにしていただきたいな」と訴え、観客を笑わせた。

次のページへ (2/2) 【写真】美術業界について真剣な表情で語り合う橋爪勇介氏&山田五郎氏の姿
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