実は武蔵と小次郎は闘っていなかった!? 猪木と斎藤の「決闘」から34年後の「巌流島」の今
猪木と斎藤が闘った草原に寝っ転がってみた
さて、前振りが長くなったが、10月末、ふと思い立って巌流島に足を運んでみた。時代は昭和から平成を経て、すでに令和に入っているが、それでも歴史ロマンはいつの時代も息づいている。
とはいえ、まず疑問だったのは、コロナ禍の今、島に渡ることができるのか。
記憶によれば、確か山口(下関)と福岡(北九州)の双方から船が出ていたはずだが、通常運行しているのかどうか。
まずはそれを調べることから巌流島への道はスタートした。結果、福岡からの船は全休しているが、下関からの船は行き来していることを確認。となれば、あとは下関のどこに行けば船に乗れるのかを調べると、2つのルートがあることが分かった。
選んだのは、JR下関駅から2つ目のJR門司港(もじこう)駅から歩いて程なくした場所が船の乗り場。
門司港から唐戸港、唐戸港から巌流島。それぞれ10分前後の船旅で巌流島に到着する。聞いた話では、以前は船頭さんのアナウンスで猪木VS斎藤の話が出てくることもあったそうだ。唐戸港にあった市場では「おそいぞ武蔵」と「巌流焼」なるどら焼き(それぞれ、黒あんと白あん)という巌流島スイーツも確認できた。
それより驚いたのは、思ったよりも簡単に現地に着くことができたこと。幸い、天気もよかっただけに、船の上では心地の良い風を全身に浴びられたことも、自然と気分をよくしてくれた。
現在はネットをつなげば大概のことはすぐに教えてくれるとはいえ、行ってみなければ分からないこともたくさんある。
巌流島に上陸し、最も実感したのは、思っていたよりもはるかにのどかさを感じたこと。
「現地に行って思ったことは、これ、絶対に武蔵と小次郎はここで闘ってないなと思った」
いつだったか「巌流島」という格闘イベントを主催する谷川貞治氏(元K-1イベントプロデューサー)からそんな話を聞いていたが、たしかにそう感じてしまうくらい、殺伐とした雰囲気がまったく感じられないのである。むしろ開放感に満ちている、といったほうが正しい。
実際、猪木と斎藤が闘った草原に寝っ転がってみたが、できればそのまま1時間でもうたた寝してしまいたくなるくらい、ボーッとしていたくなる空気感があった。
他には、武蔵と小次郎の像が設置された場所あたりからは、潮風に吹かれながら、大小さまざまな船が行き交う関門海峡の雄大な景観を眺めることができる。