元おニャン子・新田恵利が告白 自宅で看取った92歳母への思い「介護は幸せな時間」
親と子の立場が逆転「少し悲しく寂しく切なかったです」
――次第に満足に食事ができない状態になってしまい、好きなものだけ食べるようになってしまいました。
「年を取ると子供に返ると言いますが、本当にそうでした。感情の表し方とかもそうですし、好きなものだけ食べたり……。その姿は親が親ではなくなるようで、親と子の立場が逆転していくのが、少し悲しく寂しく切なかったです」
――母親との思い出を聞かせてください。
「私は母と仲のいい親子だったので、思い出は山ほどあります。この本には91歳のお誕生日までのことしか書いていません。それから3か月ちょっと、介護であっても看取りの時期ですね。母との会話も変化してきました。文章の会話が単語になって、その単語もどんどん短くなりました。最後は反応だけになっていきました。でも、今年のお正月は元気にお雑煮を食べて、笑顔で『もうちょっと面倒見てね』って。そのときの私は『喜んで』って答えました。素直にすっと出てきた言葉が『喜んで』と言えた自分がすごくうれしくて、そのエピソードが今は一番心に残っています」
――6年半の介護生活を振り返ってみていかがでしたか。
「頑張って在宅介護にして良かったと思います。一番は母の意に沿った介護と見送りができたこと。家族そろって見送れたのは本当に幸せなことです。仕事があったり家庭があったり、さまざまな環境と状況の中でなかなか難しいと思いますけど、亡くなったあとに後悔することを思えば、ひと踏ん張りできるかなって思います」
――新田さんにとって介護とは。
「終わってみると幸せな時間でした。やっているときは『もー』とか思うこともありましたけど、ちゃんと見送れたからこそ『悔いがない』と。後悔しないことが大切だと思います」
――今後、やっていきたいことは。
「コロナが落ち着けば、また全国で講演をしたいです。私もそうだったんですが、介護って自分がやらなきゃいけない状況になるとか、すぐ近くで起きないと他人事なんです。できれば避けて通りたいし、嫌なことは聞きたくない。どうしても皆さん、介護を避ける傾向があります。だからこそ私の講演が『考える』きっかけになってくれると良いなと。介護が終わって言えるのが、在宅での『看取り』はとてもいいですよ、ということ。本人だけでなく、家族みんなが幸せになれる。これからは介護と看取りという形で、みなさんにお話ができたらなと思っています」