藤井3冠3連勝の竜王戦第3局 驚きの手に現れた両者の研究の深さ 真田圭一八段解説

真田圭一八段
真田圭一八段

藤井3冠は早くから形勢良し、と判断したか

 2日目はこの飛車を巡っての戦い。端的に言えば藤井3冠が飛車の威力でリードを奪えるかどうかだ。

 注目したのは53手目。後手からは△1九角成と香を取る手が見えているが、それには▲3三角と王手飛車で強襲する手がある。それを踏まえて、例えば▲7九玉と玉の安全度を高めておくのか、或いは▲1七香と取られそうな香をあらかじめ逃がしておくのか。

 他にもさまざまな有力手があり手の広い局面。いかにも棋士の個性が表れそうな局面で、藤井3冠の選択した手は▲4五飛。この手は一番自然な手だが、このような手を選ぶ場合、大局観が重要になる。自分の方が形勢がいいと判断し、それが正しければ自然な手の積み重ねで勝てるが、判断に誤りがあると一気に形勢を損ねかねない。

 藤井3冠は形勢は既に我に利ありと判断し、具体的には以下55手目▲2五飛、63手目▲8五飛と、飛車の威力を前面に押し出すことで手勝ちできるとの読みだ。その途中、61手目▲2二角と打ちにくい角を打つなど才能を感じさせる手も織り交ぜている点も見逃せない。

 豊島竜王から見れば不利になったのはいつの間にかなのか、それとも徐々になのか。▲8五飛の局面は△7一金と頑張っても勝ち目がないと判断せざるを得なかった。68手目△4九馬以降は、お互い一直線に相手玉に迫る長手順ながら、最終93手目▲3四香まで決められた結末に向かう作業のような流れで藤井3冠の勝利となった。

 一言で言えば、こうなるともう藤井3冠には強すぎるという言葉しかない。とにかく難解な中盤戦での指し手の精度の高さが群を抜いている。これでいよいよ竜王獲得に王手。藤井時代の本格的な幕開けが近づいている。

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