大ヒット作「イカゲーム」EP5解説 綱引きゲームで南京錠はなぜ消えた? ジェンダー、労使問題も示唆
絶妙なパラドックス、強いが故に襲撃の危機
各チームは消灯時間後、他チームからの襲撃に備える必要があった。ギフンのチームはバリケードを作り交代で見張り番を置くことにした。ギャング組織から追われているドクスがギフンの陣営にやって来て「こんなもので身を守れるのか? 隙間風が入りそうだ」と威圧すると、ギフンは「あんなクズにみたいな仲間を本当に信じるのか。オレだったらケンカが始まったらお前から殺す。お前が1番強いから」と諭す。これに言葉を失ったドクスは自陣営に戻ると襲撃の中止をチームに命じるのだった。
このせりふは絶妙だ。1番強いからこそ襲撃され命を落とす危険がある。強いが故にジレンマに陥ったドクス。見事なパラドックス(逆説)となっている。
自動車会社から解雇の過去、主人公はPTSDという人物造形か
次いで交代で見張りをする場面。ギフンの目の前に催涙弾が転がり煙が立ち込める。助けを求める男がこん棒でたたかれ血だらけとなっていく。自動車会社に勤務していた時にバリケードを作ってストライキを断交したところ警察に激しく弾圧された記憶がフラッシュバックのようによみがえってきたのだ。
10年以上勤務したのに突然解雇されたギフン。競馬にうつつを抜かし怠惰な生活を送っているように見えるが、ギフンはこの時に受けたショックによってPTSD(Post Traumatic Stress Disorder=心的外傷後ストレス障害)を抱えてしまった人物として造形されているのかもしれない。それは韓国社会における労使問題を問うことにもつながっており、「イカゲーム」というドラマが社会の現実にストレートに向き合っていることを改めて示している。
次回は第6話(エピソード6)を取り上げる。
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