大ヒット作「イカゲーム」EP2解説 ブタの貯金箱とラカンの本、壁の絵画に隠された意図

セットで使われたラカンの「欲望理論」とマグリット「光の帝国」

 ゲームに参加した主人公のソン・ギフン(456番)の母親が糖尿病で入院するが、入院費を払う余裕がない。パキスタン人労働者アリ・アブドゥル(199番)は工場の社長に差別され給料も半年間にわたって未払い状態。押し問答の末、力ずくで社長のカネを奪って逃走する。脱北者のカン・セビョク(067番)は命がけで貯めたカネを脱北ブローカーにだまし取られた末に、さらに4000万ウォン(約390万円)を要求される。ソウル大卒業後、証券会社に就職したサンウ(218番)は横領、私文書偽造、詐欺などの容疑で警察に追われる身。組織のカネを着服したチャン・ドクス(101番)はフィリピンマフィアから襲撃され逃走する……。

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 第2話のタイトル通り、現実の世界は相変わらず「地獄」のまま。参加者は“希望”を求めて再びゲームへの参加を決意するのだった。外国人労働者や脱北者の搾取問題など国の負の側面を真っすぐ描いているところが日本のデスゲーム系作品との大きな違いだ。

 さて、第2話では警察官のファン・ジュノが、行方不明になった兄・インホの手掛かりを探るため兄が住んでいた貸部屋を訪れるシーンが登場する。よく見ると机の上に置かれた本はフランスの精神分析学者ジャック・ラカンの「欲望理論」だ。「人間の欲望とは他者の欲望である」というラカンの有名な言葉がある。ラカンの著書をセットの一部として使った意味は大きい。何が人間の欲望をかきたてるのか。その社会的背景とは何か。貧しい者は命を削りながら毎日を生きているといった現代社会のリアリティーが皮肉にもこの本のタイトルからくみ取れる。

 壁にはベルギーの画家ルネ・マグリットの作品「光の帝国」の絵が見える。この絵にはどんな意味があるのだろうか。絵の構図を見ると下半分が夜の湖、上半分が昼の青空という異質な風景が並存している。常識では考えられない矛盾する要素を同時に描くシュルレアリスムの代表的な作品だ。参加者にとってゲーム会場と現実社会は互いに相いれないパラレルワールド。「光の帝国」はドラマで描かれる矛盾に満ちた2つの世界を表しているのだろう。「イカゲーム」に隠された意図がこんなところにも見て取れるのは非常に興味深い。

 次回は第3話(エピソード3)を取り上げる。

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