Netflixオリジナルの韓国ドラマ「イカゲーム」が世界的な人気を集めている。9月17日に配信が開始されるとNetflixの全米1位を獲得する快挙を達成。配信後ほぼ1か月で全世界1億4200万世帯が視聴し、94か国でランキング1位を記録するなどNetflix創設以来最大のヒット作となった。当分はこの勢いが続くとみられるが、なぜこれほどまでに世界中の人々を魅了するのか。熱心な視聴者による考察ポイントを紹介しながら画面の隅々まで行きわたっている伏線の“構成美”について解説する。今回は第1話。（文・構成＝鄭孝俊）

　全9話からなる「イカゲーム」は緻密に構成されたドラマだ。飲食事業の失敗で莫大（ばくだい）な借金を背負い大金を用意する必要に迫られた主人公のソン・ギフン（イ・ジョンジェ）は、謎めいたゲームへの招待を受け参加を決意する。ゲームは全部で6種類。第1ゲームは「ムクゲの花が咲きました」（日本ではだるまさんが転んだ）、第2ゲームは「型抜き」、第3ゲームは「綱引き」、第4ゲームは「ビー玉遊び」、第5ゲームは「飛び石渡り」、第6ゲームはドラマタイトルにもなっている「イカゲーム」。優勝賞金は456億ウォン（約44億円）。夢のような大金だが、それは子どもの遊びを装った残虐なデスゲームだった。（※以下、ドラマの内容に関する記述があります）

　第1話（エピソード1）では個人が抱える負債（借金）について問題提起される。母親の貯金をかすめて競馬にのめりこむギフン。第10レースで「6－8」を的中させたギフンは456万ウォン（約44万円）を手に入れて大喜びするが、脱北者のカン・セビョク（チョン・ホヨン）に盗まれてしまう。

　途方に暮れたギフンが地下鉄の駅で見知らぬセールスマン風の男（コン・ユ）に声をかけられめんこで勝負する場面がある。めんこの色は2種類。赤と青だ。男から「どちらを選ぶか」と聞かれたギフンは青を選ぶ。ネット上では青を選んだからゲーム参加者となり、赤を選んでいたら赤いコスチュームにお面をかぶった運営側になっていたのでは、という見方が出ている。

　3年前に妻と離婚したギフンは中身を確認しないまま10歳の娘に誕生日プレゼントを贈るが、箱の中にはおもちゃの銃が入っていた。引き金を引くと銃口から火が出る。イカゲームの脱落者が容赦なく射殺され、死体は焼却炉に入れられ炎で焼かれることを予言しているかのようだ。

　「イカゲーム」というドラマは韓国社会への皮肉がベースになっていることから、「赤」と「青」は韓国の国旗・太極旗の色を表しているとの推理もある。「イカゲーム」を中断して元の世界に戻った参加者たちはゲーム会場の内と外、どちらの世界も地獄であることを悟る。ゲーム続行を決める多数決で参加者が「外に出たって地獄だ」と叫んだのもその表れだ。貧富の格差拡大、失業率の増加、自殺率の高さ。こうした現実の社会的背景が織り込まれているからこそドラマに深みが出るのだ。