切っても切れないプロレスと入場テーマ曲の関係 応援選手と“推し曲”も大きな魅力
藤波辰巳(現・辰爾)はオリジナル曲が出来上るまでは「スターウォーズ」だった
ジュニア王者として凱旋(がいせん)し、一大ブームを巻き起こした藤波辰巳(現・辰爾)もオリジナル曲が出来上がるまでは、「スターウォーズ」のオープニング曲で入場している。全日本プロレスではAWA世界王者が使用していた。
木戸修はMonkeyFlipの「BLACK-RIDER」を採用していたが「俺、バイクには乗らない。車の運転は好きなんだけど」と苦笑い。実際、カーマニアで知られている。「木戸さんは日光浴が大好きで色黒だから、BLACK-RIDERじゃないんですか」と言うと「そうかもな」とにっこりしていた。
1979年8月26日の「夢のオールスター戦」の第6試合。ロッキー羽田が映画・ロッキーのテーマ曲で入場したときの日本武道館の大歓声を忘れられない。格上の坂口征二に立ち向かう羽田とロッキーの姿を重ね合わせたファンの思いが爆発した。
かたや坂口はいつも通り、テーマ曲の進行を気にせず入ってくる。重々しい太鼓など和風の名曲「燃えよ荒鷲」を聞きたいのに…ゆっくり聞けるのはまれだった。
新日本プロレスと全日本プロレスは、それぞれテレビ朝日と日本テレビのスポーツテーマ曲を使用した時期もある。両団体のカラーに合致していた。
入場曲はやはり欠かせない。いや、もはや入場曲なしのプロレスは考えられない。当初は既存の楽曲を使用していたが、今ではオリジナル曲が大半を占めている。二次使用の際の権利関係など大人の事情もあるようだ。
新日本プロレスの安沢明也が15年以上前のNHK大河ドラマのオープニング曲を使用したところ、ほどなくしてクレームが入ったという。すぐに違う曲に変えている。
2011年のオールトゥギャザー開催前には主催者の新聞社に、音楽の著作権を保護するJASRAC(ジャスラック=日本音楽著作権協会)から「楽曲の使用料金」のお知らせが来たという。新日本プロレスから「我々が年間契約料で支払っていますから大丈夫です」と連絡が入り、一件落着となったそうだ。
現代社会はすべて契約が基本。権利関係への配慮は欠かせないが、オリジナル曲となると思い入れも変わってくる。鈴木氏のようなミュージシャンが選手のために新たに作曲した作品は、見事に選手のイメージとピッタリ。素晴らしい。
その曲を聴けば、その選手の勇姿がよみがえる。名勝負の数々も思い出す。特に、引退あるいは亡くなってしまった選手、最近試合をしていない選手の曲は、切なさと共にいつまでも色あせることなく心に残っている。
ザ・ファンクスの「スピニングトゥホールド」、アブドーラ・ザ・ブッチャーの「吹けよ風 呼べよ嵐」、アンドレ・ザ・ジャイアントの「ジャイアントプレス」、ブルーザー・ブロディの「移民の歌」、スタン・ハンセンの「サンライズ」、ロードウォリアーズの「アイアンマン」、タイガー・ジェット・シンの「サーベルタイガー」…。
テーマ曲に一家言ある現役選手も多い。DDTのHARASHIMAは「サーベルタイガー、ジャイアントプレス、アイアンマンがベスト3ですね。その選手のイメージにピッタリで、怖さ、ワクワク感が半端ない。とにかく格好いい」と力説している。
鈴木氏は3冠王者ジェイク・リーの「戴冠の定義」など、最前線の選手の入場曲も手掛けている。今後も名曲の誕生が楽しみだ。
あなたが頭に描く旋律は何ですか?(文中敬称略)