浅倉カンナ、RIZIN次戦への決意 “純情”からの変貌 「キラー浅倉」を発動させるか
いつの間にか狙われる立場に
それでも18年の大みそかに初めて浜崎の持つベルトに挑戦した際は2R2分34秒、腕ひしぎ十字固めによる一本負けだった。それを思えば、タイトル戦がなかった1年3か月の間の成長曲線は十分に右肩上がりを示していたことになる。しかも、もうすぐに頂上が見えてくる。そんな位置までは7年間でたどり着けたのだ。
「頂上取りたいですね」
浅倉はそう言ってニコリと笑った。
今回、浅倉が「RIZIN.31」で対戦する大島沙緒里は、王者・浜崎と同じAACCに所属するファイター。DEEP女子ミクロ級とDEEP JEWELSアトム級の2冠王であり、3歳から始めた柔道では、14年9月の全日本ジュニア体重別選手権女子44キロ級で優勝という実績を残している。
「(大島は)下の階級でもベルトを取っているけど、(会見で並んでみると身長149センチと)思ったより小さい。勢いと瞬発的なパワーはあると思うので、そこだけはしっかり気をつけておけば大丈夫かなっていう感じですよね」と浅倉は冷静に分析した。
しかし浅倉からすれば、それよりも、という雰囲気で、「今までは挑戦する側だったのに、いつの間にか迎え撃つ側になっていて。それは思いましたね」と答える。これは率直な感想だろう。
「迎え撃たないといけないのはやりづらいとかあるんですけど、そこは気にせず、自分の実力をただぶつければいいなと思っているので。(自分が16歳という)年齢が早くデビューしたのもあるんですけど、意外とやっていて、狙われる位置にはきているんだな、とは思いました」
さらに「(大島は)浜崎さんとちょっとタイプは似ているので、(対策は)前回とだいたい一緒なのかなあと。だからそこはやりやすいなっていうのはあるんです」とも話す。
「気づくとAACCの選手がいつも反対側のコーナーにいる。大島選手はいつも浜崎さんと練習していると思うし、そういう部分でも、しっかり勝ってまた浜崎さんにたどり着きたいと思っています」
やはり浅倉が狙っているのは浜崎の持つ女子アトム級のベルト。それだけに今回は余計に負けられない。
初めての心境に陥った古瀬美月戦
さて先述通り、浅倉は業界屈指のベビーフェース。誰に話を聞いても、なかなか浅倉を悪く言う人は見当たらないことはすでに書いた。
もちろん、それは一般社会での評価であれば問題ないが、リング上に持ち込まれるとまた話は変わってくる。相手の顔面を殴り合うような試合である以上、時には非情に徹することができなければ生き残ることができない世界だからだ。
浅倉本人もそのことは十分に理解しており、「仲良くなっちゃうと、気にしていないと思っても多少は出ちゃう(情が入ってしまう)と思うので、女子の格闘家の人とは仲良くしてないです」と話した。
実はそんな浅倉の性格とは真逆の面が浮き彫りになった試合があった。それが「RIZIN.22-STARTING OVER-」(20年8月9日、ぴあアリーナMM)で行われた、古瀬美月戦になる。当時、古瀬はキャリア6戦目であり、「RIZIN.31」で浅倉が闘う大島同様、浅倉が古瀬を迎え撃つ一戦だったが、結果的には浅倉が1R1分35秒、TKO(パウンド)で古瀬を秒殺。しかも、それまでの浅倉の闘いぶりとは一変したかのようなキラーな面を爆発させた。
1R開始から程なくして、古瀬のバックマウントを取った浅倉は、あらゆる角度から古瀬の顔面めがけて鉄槌やパンチを浴びせ続ける。いったい浅倉に何があったのか。その理由は、1年前にYouTubeの「浅倉カンナチャンネル」に公開された動画で知ることができる。
それによれば、試合直前、今からまさに両者が入場しようとする段階で出番を待っていた際、浅倉と古瀬双方の様子がモニターに映し出されたという。
まずそれを見て、第一の怒りが浅倉にこみ上げてくる。
「カンナは集中して『よし』って感じだったんだけど、相手が『カァーッ』ってあくびしてたの。それにカンナ、すごいムカついちゃって。もうプッチーンて」とぶ然とした表情で語る浅倉。
浅倉が言うには「今まで、試合前とかさ、試合中もそうだけど、試合終わってからもそうだけど、相手に対してムカついたことはないわけよ。イラッとしたことはない」のだという。要は、浅倉にとっても初めての心境に陥ったのだ。
「カンナが浜崎さんとやる時、どうだったかな? そんな(あくびをする)余裕があるんだと思って。こっちはしっかり準備してやってきたのに。めちゃめちゃムカついたの、そこで。はあ? っと思って。で、あおり(紹介映像)が始まりました。カンナはいつも(映像作家の佐藤)大輔さんのあおりをしっかり見て、『よし』って気合を入れて入場するんだけど、それでさらに80の怒りが150になったわけ。もうなんかムカついちゃって、珍しく。もうやってやろうと思って入場(通路)を歩いて行って、もう絶対にぶっ飛ばすと思って、入場を歩いてた、今回は」