東出昌大、心を病んだ男で主演「苦しい境遇にある方の肩の荷が下ろせるようなものに」

俳優の東出昌大(33)が「草の響き」(10月8日公開、斎藤久志監督)で3年ぶりに映画主演を果たした。北海道・函館市出身の作家・佐藤泰志氏の短編小説が原作で、心に失調をきたし、妻(奈緒)と2人で故郷・函館へ戻ってきた和雄(東出)とその友人・研二(大東駿介)や街で出会った若者の物語。3年ぶりの映画主役に、東出の思いは?

3年ぶりの映画主役について語った東出昌大【写真:ENCOUNT編集部】
3年ぶりの映画主役について語った東出昌大【写真:ENCOUNT編集部】

映画「草の響き」で主演「みんなで作ったという言葉に尽きる」

 俳優の東出昌大(33)が「草の響き」(10月8日公開、斎藤久志監督)で3年ぶりに映画主演を果たした。北海道・函館市出身の作家・佐藤泰志氏の短編小説が原作で、心に失調をきたし、妻(奈緒)と2人で故郷・函館へ戻ってきた和雄(東出)とその友人・研二(大東駿介)や街で出会った若者の物語。3年ぶりの映画主役に、東出の思いは?(取材・文=平辻哲也)

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 東出が演じるのは、精神科の医師に勧められるまま、治療のために雨の日も、真夏の日も、ひたすら同じ道を走り、記録をつけ、自身に平穏を見いだしていこうとする和雄。1979年に発表された短編小説は東京都八王子が舞台になっているが、映画では現代の函館に置き換え、「そこのみにて光輝く」や「きみの鳥はうたえる」などでも知られ、41歳で自殺した佐藤の実体験も反映させている。

 撮影はコロナ禍の2020年11月から函館で約3週間。東出にとっては「寝ても覚めても」以来の3年ぶりの主演だ。「どの役に携わらせていただいても、番手は全く気にしないですね。これはどういうふうにやればいいんだろうというのは、監督や企画によって、考えますが」と話す。

「座長という言葉が、責任感でしたり、周りに気を配ってとか、広く受け止めるバックネットみたいなものだとしたら、それは大東君が全部引き受けてくれました(笑)。大東君が撮影のない日にレンタカーを借りてきてくれて、ドライブをして、(函館名物の)焼き鳥弁当を一緒に食べながら、『和雄と研二(役の2人)も同じようなものを食べて、会話していたんだろうな』と話したりしました。大東君の大きさに包んでもらった気がします。奈緒ちゃんは奈緒ちゃんで、演技が初めての若い子たちの話を聞いてあげたりしていましたし、役としても素晴らしかった。みんなで作ったという言葉に尽きる気がします」

 原作があっても、あえて脚本しか読まない俳優もいるが、東出は原作があれば、毎回、手に取ってみる。「原作に多くのファンがいらっしゃる作品は原作の魅力やエッセンスをわかってないと、ファンの方に顔向けできないと思っています。原作を読むと、なにかしらの心理的な理由が書いていることがありますし、特にこの作品でも助けになった部分が大きい。原作の舞台は八王子ですが、実際に函館に来てみると、空気感がまったくイコールでした」と振り返る。

 映画は生と死の境界が匂いたつ土地の中で、精神を病んだ和雄は治療のため、ランニングにのめり込んでいく。「和雄は毎日同じところを走っていても、見えるものは違うと思いながら、いろいろな出会いがあります。原作の佐藤泰志さんご自身がこの原作を書かれた翌年にある行動をとるのですけれども、これはご自身の物語なんじゃないかなと話し合いました」。

 病んだ人物を演じるのは精神的につらい経験ではなかったか。「佐藤泰志さんは苦しみの中、この物語を書いたかもしれません。撮影中に心がきついお芝居をすると、僕らもケロッとしていられるわけじゃなく、役に気持ちが引っ張られれば、苦しい思いもするんですけれども、そうして撮れたものが、苦しい境遇にある方の肩の荷が下ろせるようなものになっていたら、と思ったりもします。おこがましいんですけれども」。

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