女優の卵たちが繰り広げる本気のプロレス アクトレスガールズってなんだ?

“女子プロレス”アクトレスガールズとは、読んで字のごとく「女優によるプロレス」である。女優との兼業をコンセプトにしたこの団体は、2015年9月に旗揚げ。これまで人気、実力を兼ね備えたレスラーを次々輩出してきたが、コンセプトがコンセプトだけに色眼鏡で見られることも多かった。プロレスラーを名乗る以上、やはり人並みはずれた超人アスリートであってほしい。運動選手でもないプロレスラーなんて、と筆者自身も否定的な見方でいたものだ。

渾身のラリアットを叩き込む王者高瀬(右)【写真提供:アクトレスガールズ/山川隆一】
渾身のラリアットを叩き込む王者高瀬(右)【写真提供:アクトレスガールズ/山川隆一】

「どうせ女優でしょ?」そんな偏見と戦い続ける日々

“女子プロレス”アクトレスガールズとは、読んで字のごとく「女優によるプロレス」である。女優との兼業をコンセプトにしたこの団体は、2015年9月に旗揚げ。これまで人気、実力を兼ね備えたレスラーを次々輩出してきたが、コンセプトがコンセプトだけに色眼鏡で見られることも多かった。プロレスラーを名乗る以上、やはり人並みはずれた超人アスリートであってほしい。運動選手でもないプロレスラーなんて、と筆者自身も否定的な見方でいたものだ。

 が、プロレスの聖地と呼ばれる東京・後楽園ホールに進出する頃(2018年11月15日)くらいからか、「意外としっかりしたプロレスをしている」、というふうに印象が変わってきたのである。「女優だから」「女優のプロレスなんて」という声があるからこそ、そんな評価を覆したい。試合を見ていると、そういった思いが彼女たちの原動力になっていることがうかがえる。全日本女子プロレスでクラッシュ・ギャルズや団体対抗戦といった黄金時代を生き抜いてきた堀田祐美子がプレイングマネジャーとして目を光らせていることも大きいだろう。

 若い選手ばかりにもかかわらず、もしかしたらいまどきのプロレスとはちょっぴり離れているかもしれない。だが、ひとつひとつの技をしっかりやろうとする姿勢には好感が持てる。そのうえで、技の見せ方にも工夫が見て取れるのだ。個性的なキャラクターが豊富なのも、この団体の強み。生で見てみれば、きっとこんな感想を持つのではないか。「アクトレスガールズって人材の宝庫じゃないか!」と。

 しかしながら、アクトレスガールズは現在、何度目かの転換期を迎えている。昨年末、絶対的エースだった安納(あのう)サオリが退団、フリーとなった。その前の年には安納と並ぶツートップと言われた万喜なつみも外部に闘いの場を求めた。確かに団体的には痛手だろう。だが選手の新陳代謝はプロレス団体を名乗る上である意味宿命でもある。それだけに、この転換期こそが、大きなチャンスでもあるのだ。

 そんな過渡期にチャンピオンとして団体を背負う立場になったのが、AWG(アクトレスガールズ)第3代王者・高瀬みゆきである。高瀬は“筋肉アイドル”才木玲佳(WRESTLE-1)が負傷欠場により返上した王座を“女ネクストジャンボ”有田ひめかとの新王者決定戦に勝利し初戴冠。ベルトを巻く以前から「AWGはどうあるべきか?」などを熱く語る情熱的な選手だったが、チャンピオンとしての器はどうなのか。今後、王者・高瀬の真価が問われてくる。

 そして迎えた2月2日新木場1st RING。メインでは安納退団後、初めてのタイトルマッチが組まれていた。高瀬には生涯初めてのシングル王座防衛戦。「ベルトは取るよりも守る方が難しい」とはアクトレスガールズが誕生するよりずっとずっと前からプロレス界で言われてきたことだ。ただでさえプレッシャーのかかるシチュエーションに加え、相手が先輩の尾崎妹加(おざき・まいか)である。尾崎は旗揚げ戦でメインに抜擢され2016年3月に退団した元アクトレスガールズ。高瀬とは行き違いとなったのだが、旗揚げ当時からのファンに比較されることは間違いない。「元アクトが現アクトに勝つことを考えると……」と高瀬。「アクトから抜けた方が成長すると思われたくない」との気持ちもあった。そのうえ、尾崎は「元ウエイトリフティング3冠王者」の肩書きを持つパワーファイター。高瀬には何重ものプレッシャーが重く重くのしかかっていたのだ。

 それでも高瀬は、力にはあえて力で対抗した。序盤からラリアット合戦での真っ向勝負。5発目のぶつかり合いで打ち勝ったのは尾崎だった。が、ミサイルキックを挟んでラリアットで相手を倒すことに成功。ブレーンバスターの掛け合いでは高瀬が旋回式で決めてみせた。ダイビングセントーンをまともに食らった高瀬だが、カバーをサッと反転して丸め込んだ。逆転負けのプレッシャーを尾崎に与えた高瀬は、序盤で吹っ飛ばされたラリアット合戦に打ち勝った。そして最後はジャックハマー。これで3カウントが入り、高瀬が初めての防衛を飾ってみせたのだ。

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