朝倉未来は世界に通用するのか 萩原京平戦の苦戦で見えた課題と光明をひも解く

配信トラブルで開催時間が1時間も遅れるという、前代未聞であり前途多難な旗揚げで物議を醸した「+WEED presents RIZIN LANDMARK(ライジン・ランドマーク) vol.1」(10月2日、開催場所は非公表)。開催からすでに 3日が経過したが、改めて試合を振り返りながら思うところを述べていきたい。

“路上の伝説”朝倉未来が萩原京平に寝技で上になる場面【写真:(C)RIZIN FF】
“路上の伝説”朝倉未来が萩原京平に寝技で上になる場面【写真:(C)RIZIN FF】

朝倉未来は「世界」とどう闘うか はっきりした課題

 配信トラブルで開催時間が1時間も遅れるという、前代未聞であり前途多難な旗揚げで物議を醸した「+WEED presents RIZIN LANDMARK(ライジン・ランドマーク) vol.1」(10月2日、開催場所は非公表)。開催からすでに 3日が経過したが、改めて試合を振り返りながら思うところを述べていきたい。(取材・文=“Show”大谷泰顕)

  まず、この日行われた全4試合はどれも見どころ満載な内容になった。

 第1~3試合は1RでのKOまたは一本での決着。そしてメインの朝倉未来VS萩原京平は、フルラウンドまでもつれ込んだものの、戦前の予想通り、結果は未来が3-0のフルマークで勝利を勝ち取ったように、完勝となった。

 今回、未来は萩原相手に非常に手堅い戦法を取った。もともと、未来はKOや一本勝ちで勝ち星を重ねていくタイプではないので、その点は本来の未来らしい試合運びだったのかもしれないが、五味隆典が言うところの“スカ勝ち”(スカっとする勝ち方)を見せてほしかったのが正直なところ。

“バカサバイバー”青木真也が「レベルで言うと、(未来は)平本蓮さんよりうまいくらいだと思います」とMMA戦で萩原に敗れた元キックボクサーの平本の名前を挙げながら毒舌を吐いていた記事を見かけたが、決してそこまでとは思わないものの、プロ戦績4勝4敗という萩原の実績を考えると、そこにこれだけ苦戦してしまっているようでは、厳しい言い方をするなら、RIZINのエースの名がすたる。

 本人は非常に賢いので、その辺も十分に分かった上で、もしかしたらあえてフィニッシュにいかず、手堅くフルラウンド闘う選択をした可能性さえ感じられるが、それでもこの日、解説席に座った王者・斎藤裕との再戦をあっさりと乗り越えるような期待感が伝わってこないと、とてもとても「世界」は見えてこないだろう。

 ボクシング転向を宣言した那須川天心が年内にRIZINを去ることを公言し、米国在住の堀口恭司もいない、現在のRIZINにおいては、弟の朝倉海も含め、その期待度は日に日に上がっているのは周知の事実。

 昨日あった会見では、RIZINの榊原信行CEOの口から、「未来だって2日に足首をやった(ケガをした)んですよ。それでも『ちょっと足首が痛いけれど24日(の「RIZIN.31」)は俺が行ったほうが盛り上がりますよね。俺、行きたいです』って言ってくれた」という男気あふれるエピソードが明かされていたが、その覚悟が本心であるなら、必ずや「世界」の壁も打ち崩せるはず。それはPRIDE時代から24時間の全てを格闘技に捧げてきたファイターたちが証明しているからだ。

 未来の場合、いつの間にか背負っているものが大きくなって、格闘技以外の時間に忙殺されることも多々あるに違いないが、公言していた30歳での引退を本気で考えるなら、もしかしたら大胆に環境を変えるか、思い切ったカンフル剤になり得る指導者についてもらうか。余計なお世話かもしれないが、このままだと未来の格闘技界での実績は中途半端なもので終わる可能性もあり得てしまう。

 RIZINにおける最近の傾向を見ていくとフェザー級に人材が集結しつつある。これは明らかに朝倉未来効果。このまま行けば来年には現在、バンタム級で行われているJAPANグランプリをフェザー級で開催できるに違いない。

 これは、かつて魔裟斗を中心として、70キロのライト級でK-1グランプリ(WORLD MAX)が開催されたことに類似する。

 であるなら未来には、魔裟斗と同じく、格闘技界の中心となって業界全体をダイナミックに回しつつ、完全燃焼してもらいたい。現時点では未来がそこに価値を感じるかは定かではないが、“路上の伝説”と呼ばれ、おそらく欲しいものはほとんど手にしたきた未来には、今しかできないコスパを超えた無類の達成感をゲットする道を選ぶことを強く望む。

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