藤井聡太3冠に急所はあるのか!? 真田圭一八段が分析する藤井将棋の敗局に見られる傾向

飛ぶ鳥を落とす勢いで勝ちまくる藤井聡太3冠(19)。これまで将棋に興味がなかった人をも巻き込み、多くの人たちが沸き立っている。われわれ他の棋士たちは将棋が話題になることは喜ばしくはあるものの、指をくわえて彼の勝ちっぷりを眺めているわけではない。当然、藤井3冠の将棋をこぞって研究している。どんなふうに研究しているのか。その一例として、藤井3冠の敗局に注目してみた。そこから見えてきたものは――?

藤井聡太3冠【写真:ENCOUNT編集部】
藤井聡太3冠【写真:ENCOUNT編集部】

藤井3冠は約5年間、勝率8割超の異次元の天才

 飛ぶ鳥を落とす勢いで勝ちまくる藤井聡太3冠(19)。これまで将棋に興味がなかった人をも巻き込み、多くの人たちが沸き立っている。われわれ他の棋士たちは将棋が話題になることは喜ばしくはあるものの、指をくわえて彼の勝ちっぷりを眺めているわけではない。当然、藤井3冠の将棋をこぞって研究している。どんなふうに研究しているのか。その一例として、藤井3冠の敗局に注目してみた。そこから見えてきたものは――?(文=真田圭一)

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 藤井3冠は棋士になっていきなりの29連勝、以降も約5年間ずっと勝率は8割を超えるペースで勝ちまくり、今日に至っている。これがどれほどすごいことなのか。史上最高の天才とうたわれた羽生善治九段(51)の生涯勝率が7割。20年以上勝率7割を維持したのは羽生九段ただ1人。もともとは勝率6割で一流、6割5分で超一流と言われる世界。羽生九段のすごさが分かるが、それをさらに1割上回るペースで勝っているのが藤井3冠なのだ。

 異次元の天才と呼ぶべきで、当然、分かりやすい弱点などありはしない。だが、将棋の世界では棋譜という、戦いの痕跡が明確に残る。これを分析することで、どんな天才の思考回路も解析することが可能になる。事実、これまでも羽生九段が25歳で7冠王になったときも、その棋譜を分析することで、10年後にはプロ棋士全体のレベルが大幅に上昇することになった。つまり、羽生九段の1人勝ちというわけにはいかなくなった。同様に、時間はかかるかも知れないが、藤井3冠の棋譜を分析することで、やがて追い付こうというのが棋士たちの第1命題となってくるわけだ。

 まず、藤井将棋の特徴の最大の点は、勝ち将棋に隙がないことだ。一局を通して、藤井3冠が不利だった局面がほとんどない。逆に言えば、互角の局面から不利になるような手を指さない強さが藤井3冠にはあるということだ。そして、ひとたびリードを奪ったら、決して手放さない。つまり、藤井3冠相手に1度不利な局面にしてしまったら挽回不能と覚悟しなければならない。勝ち将棋にほぼ隙がないとなれば、数少ない敗局に焦点を当てるしかない。

 藤井3冠も人の子。全くの完全無欠というわけではない。そこで、藤井3冠の敗局、または負けていた瞬間があった将棋を分析して、藤井3冠対策を考えてみた。結果、大きく分けて藤井3冠に勝つパターンは3つに分類される。

不利を自覚するとかなり好戦的に…!

 まず、序盤でリードする。結論から言えば、最も有効な対策はこれしかない。序盤か、遅くとも中盤の仕掛け辺りでリードを奪う。これが最も有効な藤井対策だ。

 もちろん、言うはやすし行うは難し。藤井3冠自身が序盤の重要性を自覚して、相当序盤の研究に注力している。それは棋譜から読み取れる。序盤で自分が不利にならないセンスも相当なものがある。徹底した研究量で上回ることを目指すしかない。

 ただ、うまく序盤でリードを奪えても安心はできない。藤井3冠は、めったにないことだが序中盤の折衝ではっきり不利を自覚した場合、じっと耐え忍ぶことはしない。かなり好戦的に攻め合いを志向してくる。そうなったら、ひるまず斬り合って一手勝ちを目指す必要がある。

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