ドット絵を現実世界に―科学デザイナーが抱く「世の中の解像度を下げる」挑戦とは

「身につける小さな研究室」を持ち歩いて好きな景色をピクセル化【写真:ものりさん提供】
「身につける小さな研究室」を持ち歩いて好きな景色をピクセル化【写真:ものりさん提供】

ドット絵を現実世界に!「世の中の解像度を下げる」という裏コンセプトも

――ドット絵に対する思いというのは、子どものころからあったのでしょうか?

「もちろんありました。ただ、活動のきっかけになったのは大学院時代です。当時、ドット絵で描かれた似顔絵のカードをもらったんです。そのときに、ゲームの中で大好きだったドット絵が、イラストになって紙になって目の前に現れた。『ドット絵が現実にやってきた!』と思いました(笑)。『Pixel Art Park』も『ドット絵を現実に持ってくる』というのが一つのコンセプトにもなっています。また、『ピクセルミラー』に関しては裏コンセプトもあります」

――裏コンセプト?

「なぜ解像度を下げたのかっていうところなんです。

 今、解像度はどんどん高くなっていき、テレビも4Kや8Kの時代です。あまりにも便利すぎて、自分の中で『これくらいの解像度でいいや』と思ったんです(笑)。視力が良くなるレンズやメガネはあっても、悪くなるものは世の中にはない。逆に『不便なツール』があってもいいんじゃないかと。あまりにも便利が一方向になりすぎている感覚があるので」

――あえて「解像度を低くして、世界を見る」と。

「これ以上スマートフォンが高解像度になっても僕はいらないし、これ以上SNSが進化しても誰かの悪口や承認欲求なんてもうたくさん。なんでも見えすぎてる。だから『これくらいの解像度で世の中と触れ合っていたい』と思ったんです。これ以上見えなくてもいい。『じゃあ世の中の解像度を下げてやろう』という裏コンセプトがあります。

「透明」であることを大事に 「小さな研究室」を身につけてさまざまな楽しみ方を

――制作面で大事にしていることはありますか?

「『スペクトラムキューブ』と『ピクセルミラー』にも言えますが、『透明』という部分を大事にしています。というのも、透明だと自分の好きなように使えるんですね。空を見上げ、『この景色をピクセル画にしてみたい』と思ったときに、透明だとその人に合わせられる。この『透明=合わせられる』をすごく大事にしています。その人の一番好きな風景や、その人が見たいものを、僕らの方で少しだけ手を加えて世界を変えてあげたい」

――最後に、発案者として、「スペクトラムキューブ」や「ピクセルミラー」のオススメの使い方はありますか?

「オススメかどうかは分かりませんが、アクセサリーとして身につけたり、自分の好きな風景をピクセル化してみたり。購入してくださった方にいろいろ研究してもらって、オススメの使い方やシチュエーションを逆に教えてもらいたいです。

 最近は全て『身につける小さな研究室』をテーマに制作しています。透明だから何でもできるので、透明なものを好きなものに当てはめてほしい。『小さな研究室』を持ち歩いて、自分の使い方を研究してみてください」

□ものりmonoli(@Hakusi_Katei)理系大学院で博士号を取得した科学デザイナー。2014年から「科学と美術」を組み合わせたアイテムの制作や販売を始める。翌15年からはドット絵を集めたイベント「Pixel Art Park」を開催。さまざまな色を放つ「スペクトラムキューブ」や、見た風景をドット絵に変える「ピクセルミラー」がインターネット上で話題になる。アイテムは「BOOTH」(https://monoli.booth.pm/)で販売中。

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