ドット絵を現実世界に―科学デザイナーが抱く「世の中の解像度を下げる」挑戦とは
赤や青などさまざまな光を放つプリズムのネックレスに、かざすだけで風景がカクカクとしたドット絵(ピクセル画)に変化する水晶。そんな「科学と美術」をかけ合わせたアクセサリーが注目を集めている。
「科学と美術」を融合させた科学デザイナー・ものりさんに聞いた
赤や青などさまざまな光を放つプリズムのネックレスに、かざすだけで風景がカクカクとしたドット絵(ピクセル画)に変化する水晶。そんな「科学と美術」をかけ合わせたアクセサリーが注目を集めている。
光の輝きが美しいプリズムを使用したネックレスは「スペクトラムキューブ」、そして見るものをドット絵に変える水晶は「ピクセルミラー」という。これらのアイテムを制作したのは、「科学デザイナー」として活動するものり(@Hakusi_Katei)さんだ。ツイッターのフォロワー数は3万人超え。制作アイテムはクリエーターズマーケット「BOOTH」で販売している。「スペクトラムキューブ」や「ピクセルミラー」は、販売後すぐに売り切れてしまう人気商品だ。
ものりさんは理系の大学院で博士号を取得。科学をモチーフとしたアイテムを制作するデザイナー業や、企業プロモーションなども手がけている。また、ファミリーコンピューターや昔のパソコンのような、カクカクとしたドット絵(解像度の低いピクセル画)を集めた祭典「Pixel Art Park」も運営している。
「科学と美術」を組み合わせたきっかけはなんだったのか。人気商品はどのように生まれたのか。ものりさんにお話を伺った。
転機となった高校時代 美術系→理系で目覚めた
ものりさんの科学への興味は、0歳児のころから始まっていた。
ものりさん「赤ちゃんのころに最初にしゃべった言葉は『パパ、ママ』ではなくて、数字の『2、7』だったそうです。母や父からするとショックだったみたい(笑)。小さいころから、NHKで放送している学生向けの数学の番組を、興味を持って見ていました。数字やアイコン、マーク、色が変わるものなど、自然科学にすごく興味を持っていましたね」
――そのまま自然に理系の学校を目指したのですか?
「実はもともとは、美術大学に行こうと思っていたんです。母が絵を教えてくれていたので、絵は趣味でした。『絵を突き詰めたい』と思って高校では美大を目指していましたが、自分より上手な人が現れて、『第一線で絵を描くのは無理だ』と。そこで高校3年生の時に、理系に転学したんです」
――高校3年生! 受験直前ですよね?
「先生にはすっごく怒られたんですけど(笑)、美術系から理系に転学しました。というのも当時、化学の『化学構造式』を見て、『パズルみたいでデザインがいいな』と思っていたんです。見た目がすごく良い。化学や科学のものに“美術”として引かれました。『じゃあ理系に行くか』って、そこから研究者の道に入りました」
――科学を“美術”として捉えていたのですね。
「『見た目』から科学に入りました。今の活動にも関わっていますが、美術大学を目指していたけど理系に変わって、最終的に『科学と美術を組み合わせて活動しよう』と思うきっかけになったのが大学院です。自分の研究成果の配分で研究所がもめたり、自身の病気なども重なり、科学に希望を持てない白紙の時期がありました。そんな中『美術と、自分が今やっている科学研究というのを組み合わせたら、面白いんじゃないかな』という気持ちで、大学院時代の7年前、2014年に小さな活動を始めました。するとインターネット上で予想外にも人気になったんです」