1990年12月3日に俳優の松田優作さんを偲んで池袋サンシャイン劇場で開催されたライブを収録したDVD「CLUB DEJA-VU ONE NIGHT SHOW 松田優作・メモリアル・ライブ」の一夜限りの試写会が30日、東京・新宿のテアトル新宿で開催され、ライブの演出を行った崔洋一監督、出演の原田美枝子らが出席した。

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「CLUB DEJA-VU ONE NIGHT SHOW 松田優作・メモリアル・ライブ」は1989年11月6日に40歳の若さで亡くなった松田さんの1周忌イベントとして開催したもの。「CLUB DEJA-VU」のオーナーという設定の松田さんが不在の中、かつての仲間たちが集まり、歌やトークでしのぶという趣向。ライブは原田芳雄が発起人となり、崔監督が構成・演出を任され、映画プロデューサーの故・黒澤満さんが企画・製作。水谷豊、原田芳雄さん、内田裕也さん、宇崎竜童、世良公則らが出演した。

　当時は約800人の観客のみが目撃した伝説のステージと言われていたが、記録用のビデオテープと音源のDATが存在し、この度、崔監督がゆかりの人々にインタビューしたドキュメンタリー「優作について私が知っている二、三の事柄」と合わせて、DVD化されることになった。

　ライブは水谷の語りで始まり、出演者が、松田さんが作詞などを手掛けたゆかりの曲を熱唱。その中には既に亡くなった原田芳雄さん、内田裕也さん、「シーナ&ザ・ロケッツ」のシーナさんの姿もあるほか、石田えり、原田美枝子、桃井かおり、大楠道代ら女優たちも歌唱を披露。ほかにも、鮎川誠、原田喧太、白竜、BORO、梅林茂といった豪華メンバーが顔を揃える。

　上映後に挨拶に立った崔洋一監督は「昼のビールに誘われ、原田邸に行ったら、メンバーが揃っていて、欠席裁判のように、いろんなことが決まっていた。芳雄さんから『何かイメージはないか？』と言われ、『雇われクラブのオーナーが不在のまま、そこにかつての従業員、女達、仲間たちが好きに歌ったり、語ったりするという内容でどうでしょうか？』と言ったら、『出来上がったね。それでいいよ』と言って始まった。出演者はノーギャラ。ライブは350万円の大赤字だった。ライブは記録に残さなくていい、記憶に残れば、いい。それが優作へのリスペクトになるといい、テレビ中継の話もあったが、断った。でも、黒澤さんが『残そうよ』と言って、急きょビデオを回することになり、音源もPA用のDATが残っていた」と明かした。

　出演者を代表して献杯のあいさつに立った原田美枝子は「観た瞬間、タイムカプセルを開けたようだった。私たちは本当に優作さんが大好きで、男も女もみんな優作さんの恋人だったなと思うんです。恋人になりたかった、そんな存在でした。それは、男も女もだったよね」と水を向けると、崔監督は「『私たち、全員、愛人だったよね』と言うんです。ドキッとしました」と笑み。

　続けて、原田美枝子は「仕事がうまくいかないときは優作さんのところに相談に行くんですが、そんな時はだいたい怒られるんです。『なら、辞めれば』とか、『もう、うちに来ないでくれ』とバッサリ切られる。で、優作さんに褒められると、本当に嬉しくて……。突然亡くなったときに、どうしていいか分からなくなってしまった。優作さんは『今度はお前らが大人になれよ』と言った気がしました。納骨が決まった時は、遺骨を預けている禅堂に（妻の）松田美由紀さんと行きました。以来、座禅を続けているけども、仏様の向こう側に優作さんがいて、『美枝子、こっちだよ』と言っているような気がしています。だから、死ぬことが全然怖くなくなった。死ぬ時は優作さんが迎えに来てくれるだろうと信じていて、その時に、『よく頑張ったな』って言ってもらえるような生き方をしたい」と語った。

　また、ライブに出演した故人にも触れ、「芳雄さんの声を聞いた途端に涙が出てしまいました。本当に格好良かった。美しかった。それから、この世界には珍しい、本当に静かな、優しい、何があっても動じない佇まいの黒澤さん。お見かけするとホッとしました」と言うと、崔監督も、内田裕也さん、シーナさんらの故人の名前も挙げて追悼。会場を埋めた関係者とともに缶ビールで献杯した。

　2枚組DVD「CLUB DEJA-VU ONE NIGHT SHOW 松田優作・メモリアル・ライブ」「優作について私が知っている二、三の事柄」は2月5日、東映ビデオから発売される。