「感染拡大で差別が減った」 ひっ迫する医療体制…現場医師が語る本音と提言

埼玉医科大学国際医療センター脳卒中外科の鈴木海馬医師
埼玉医科大学国際医療センター脳卒中外科の鈴木海馬医師

感染拡大により、皮肉にも医療従事者への差別的な風潮は減少

 埼玉医科大学国際医療センター脳卒中外科の鈴木海馬医師も、改正感染症法による病院名公表の効果には懐疑的だ。

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「うちは7月に病院敷地内に21床の簡易的なコロナ専用病棟が作られ、以来ずっとほぼ満室の状態が続いています。他の病院で30件以上断られてようやく運ばれてきた方もいると聞いている。埼玉でこれですから、都内ではまったく受け入れできていない状態でしょう。コロナを受け入れてない病院に事情があるというのは同感です。世の中病気はコロナだけではない。コロナ患者を受け入れることで、もともといるかかりつけ患者の治療ができなくなれば本末転倒です」

 では、どのような対応が望ましいのだろうか。

「医療従事者という立場から言わせてもらうと、治療薬がない病気で、ましてや感染症となるとやはり怖い。ワクチン接種での集団免疫獲得は難しいと分かってきたので、有効な治療薬が開発されるまではある程度の行動制限は必要だと思います。緊急事態宣言については、時期で切るのはあまり良くないのでは。人の心理として、ここまでは頑張ろうというラインが延長となれば、やはりガッカリするもの。新規感染者数や重症者数、あるいは病床の空き具合など、別の基準を設ける方がいいのではないでしょうか」

 一方、皮肉にも感染拡大により医療を巡る状況が好転した例もある。前出の佐藤医師は「これだけ感染が拡大し身近に感染者が増えたことで、一時期と比べるとコロナ診療に従事している医師や看護師への差別や風評被害は収まってきました。差別的な見方をしていた方でご自身が入院し、考えを改め感謝される例もありました。複雑ですが、感染が増えたことで現場が理解されたことは、ある意味いい傾向かもしれません」と語る。鈴木医師も「何より、コロナに感染することが悪いことのような扱いであることが一番の問題。症状があっても隠したり、PCR検査を受けないことでより感染が広がる。コロナをタブー視しすぎる風潮をなくすことが重要ではないでしょうか」と同様の意見だ。

 新型コロナウイルスとの1年半に及ぶ戦いもいよいよ正念場といったところ。医療従事者への感謝を忘れず、もうひと踏ん張りの感染対策を継続したい。

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