今年も7作の映画出演と多忙な奈緒 佐久間由衣と過ごした「宝物のような」30分間
26歳になって思うこと「20代のうちにできる役をやり尽くしたい」
同い年の佐久間とは初共演。ここでも監督の気の利いた演出があった。「今回の作品はお芝居上でもセリフを交わしていても、どこかで(初共演ということが)にじみ出てしまうだろうなと思っていたんです。俳優同士で時間を作ったりすることもあるのですが、吉野監督が『2人でお茶して、仲良くなってきて』という時間を作ってくださったんです。その時間は本当に作品を作る上で宝物のような大切な時間になりました」。
佐久間とはどんな話をしたのか。「お互いの仕事についてを話しましたね。自然と仕事に対する悩みの話もポツリポツリしていました。作品に向き合う時に時間がかかってしまうとか、自分自身の生活を大事にしたいなと思っているとか。お互いの仕事への向き合い方が根本的にすごく通じるものがあるな、由衣ちゃんといると、安心するなと思って、作品が始まるのがすごい楽しみになりましたし、安心して現場に行けるって思いました」。
佐久間の役作りへの真摯(しんし)な姿勢にも刺激を受けたという。「由衣ちゃんは初めて会ったときは、もっとおしゃれな赤い髪だったのですが、そこにもこだわりを持っていました。『(ホリガイの性格を反映して)もう少し色が抜けた、ちょっとズボラな感じがいい』と言って、映画のような髪色になったんです。ホリガイさんのお洋服も身につけていて、自然とホリガイさんと混じり合っていく感じがすごくすてきだなと思いました」。
劇中、ホリガイとイノギが心を通わせる印象的なシーンもあるが、「シーンとして見ると衝撃的かもしれませんが、イノギさんは自分自身を肯定できないホリガイさんを肯定してあげたい、という純粋で真っすぐな気持ちがあるんだと思います。だから、私はあなたを必要としていると伝えたかった。こういうシーンでは、緊張感もあるものなのですが、私の中ですごく安心してそのシーンを迎えられました」と振り返る。
2人のヒロインの心と物理的な距離感が描かれる一方、虐待、暴力といった社会的なテーマもある。「1番イヤだなと感じたのは、暴力や虐待を受けた人たちが自分自身を攻め続けてしまうこと。過去は消えないですし、それを抱えながら生きていくのはすごく苦しいことだと思います。一刻も早くそういうことがなくなればと思いますし、そんなことがあった後も、笑える日や今が1番幸せだって言い合える1日が早く来るように、と思います。周りも気付いたり、気にかけることをあきらめないことが大事。本当にどうしようもなくても、どうか明日まで生きてという映画の強いメッセージを感じて欲しいと思っています」。
主役から脇役まで幅広くこなし、順調にキャリアを積み上げてきている奈緒も26歳。「20代の後半に入ってきたので、20代のうちにできる役をやり尽くしたいと思っています。今後も、変わらず一歩一歩ですね。どういう風に生活していくかも大事だなと感じています」。今後は、いろんな女性像を見せてくれるだろうか。
□奈緒(なお)1995年2月10日、福岡県出身。2018年にNHK連続テレビ小説「半分、青い。」でヒロインの親友役に抜てきされ、19年には「あなたの番です」ではサイコパスな役を演じ注目され、同年秋には「終わりのない」で初舞台を飾る。その他の出演作に映画「ハルカの陶」「スマホを落としただけなのに囚われの殺人鬼」「みをつくし料理帖」「僕の好きな女の子」。21年はほかに「草の響き」(10月)、「あなたの番です 劇場版」(12月)を控える。