60歳の異色サラリーマン兼業シンガー 曽我部恵一ともコラボ「真黒毛ぼっくす」とは?
今後の音楽活動は「この先も淡々とやっていくだけです」
映画の題名は、あがた森魚とのライブタイトルを冠にした代表曲だ。「憧れのあがた森魚と十数年前にライブができちゃったんだよね。それで、やっていくうちに曲も浮かんでしまって、そのままライブタイトルを題名にしちゃった。『酔いどれダンスミュージック』というのは(あがたも在籍したロックバンドの)“はちみつぱい”の曲にあったので、取ってつけたようで、後ろめたいものもあるんですけどね」。
大槻は頭の中に急にメロディーが浮かんで、それから曲に歌詞を当てはめていくスタイル。「曲作りはいつも不安なんですよ。ライブだったら、その次が見えるけど、曲作りはいつも1からですから。いい曲ができても、またできるのかなとは思います。まあ、サラリーマンだから、関係ないんだけども」。
日常を切り取った散文的な歌詞と酒の力も借りたパワフルなボーカルが持ち味。その時その時にオファーしたメンバーとのコラボレーションで、一夜限りの特別なライブを作っていく。この独特のスタイルには、プロミュージシャンも魅了されている。曽我部がメインゲストとして出演した「真黒毛ぼっくす」34周年イベント(19年)の音源をもとにしたライブアルバム「純情LIVE」も20年に発売されている。
「曽我部さんから、『あのライブがよかったので、アルバムにしませんか』と言われたんです。『でも、録音なんかしていませんよ』と言ったら、曽我部さんが録っておいてくれたというので、お願いしたんです。こんなこともあるのか、とビックリしちゃいますよね。ただ、もっと売れてもいいんだけど、全然売れない(笑)」
今後はどんな音楽活動をしていくのか。「僕はメジャーでもないし、スピッツとは違うからね。ただ、長瀬(監督)がこうやって記録として撮ってくれたのはありがたい。真黒毛ぼっくすを知らない人が興味を持ってくれたら、と思いますし、何か残ったらうれしい。僕としてはこの先も淡々とやっていくだけですよ」。サラリーマンには定年・再雇用があっても、ミュージシャンに定年はない。大槻はどんな音楽で驚かせてくれるのか。
□大槻泰永(おおつき・ひろのり)1985年、就職で上京を機に「真黒毛ぼっくす」を結成。ライブハウスなどで演奏活動。89年、太陽レコードより4曲EP「ダイナマイト」発表。その後、ライブごとに演奏者を集めるかたちで精力的に活動、自身の青空レコードより「酔いどれ東京ダンスミュージック」「夢の旅」など10枚のアルバムを発表。2020年には曽我部恵一と共演した「純情LIVE!」を発表。また「九十九里浜まで」がテレビで取り上げられて話題になる。