今年の春以降、新型コロナウイルス感染を防ぐため韓国製マスク「KF94」を着用している人を街でよく見かけるようになった。3D立体設計による独特の構造のため唇の上のあたりに空間ができて圧迫感が少ない。鼻がすっぽり覆われるため会話をしていてマスクが下の方にずり落ちてくることもない。「口紅がマスクに付着しない」と女性に好評で、報道番組のニュースキャスターやリポーターが着用している場面を時折見かける。見た目の形から「くちばし型マスク」とも呼ばれており、K-POPアイドルが普段着用していることでも話題となった。

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「KF」とは「Korean　Filter」の略で、「94」は超微細粒子0.4μm（マイクロメートル＝0.001ミリメートル）以下を94％以上ブロックするナノファイバーフィルターを使用した製品であることを表している。この条件を満たした製品に対してのみ韓国食品医薬品安全処（Ministry of Food and Drug Safety、MFDS）が認証を与えている。口周りに密着感があるため「守られている感じがある」（50代男性）との声があるが、密着感ゆえに「夏はとくにマスク内部が蒸れやすい」（雑貨店員）という指摘もある。

　そんな「KF94マスク」の模造品が大量に出回っているようで、SNSでは通販で購入したマスクが本物かどうかを調べてくれるよう専門家に依頼する投稿が目立つ。実際に韓国系の雑貨店やコスメグッズ店が集中している東京・新大久保かいわいを歩いてみると、「KF94マスク」と表示されたマスクが至る所で売られていた。果たしてそれらは本物なのか。

　JR新大久保駅にほど近い雑貨店では、韓国からの正規輸入マスクと並んで「KF94　黄砂防疫用マスク」と韓国語で表示されたマスクを販売していた。手に取ると韓国製よりパッケージが薄くて軽い。裏面を見ると、韓国語で用法や効能、注意事項が書かれているが、原産国や製造会社の住所、名前の記載はまったくない。

　店員に「これはどこの商品ですか？」と聞くと「それは中国産です」とあっさり認めた。中国製なのになぜわざわざ韓国語で表示しているのだろうか、実に怪しい。値段は20枚で1100円。購入して着用してみたところ、韓国製の「KF94マスク」に比べ格段に軽く、息がスースーと外に漏れ出す感じがする。韓国製の「KF94マスク」は20枚1700円ほどなので中国製の方がかなり安い。2人連れの女性買い物客が両方のマスクを見比べていた。「安い方は中国産らしいですよ」と声をかけると「えっ、これ中国産なんですか？　違いがよく分からないですね」と驚いていた。