高橋幸宏「年を取ることは悪いことじゃない」映画「男と女」で自身と重ねる
ルルーシュは映像と音楽がすごく重要だってことをわかっている
高橋「子供たちも、オリジナル(映画)のあの子たちですよね? 美男子になってないところが好感が持てた(笑)。当時、子供だったから確かに可愛かったよね。でもすごい出世してて、すごい高級な老人ホームに入れてるじゃないですか。その中でもトランティニャンは、昔のことを語るときに、 “ルルーシュ監督そのもの”なところがあって、70年代のパリが出てきて、確かフェラーリだと思ったんだけど、赤信号を無視して止まらないで走るシーンを見て、『それを挟んできたか!』って。昔、ドーヴィルの海岸で『A La Vie Prochaine』という4曲入りのビデオを撮らせてもらったんですが、あそこで車を走らせるっていうのは、あり得ないなと思っていたんだけど、今回走ってたよね?ちゃんと許可取ってやっているだろうけど(笑)。またそこで『昔、ここをムスタングで飛ばしたバカがいるんだよ』って話に『それ俺だよ』ってシーンがあったじゃない? ああいうお洒落なギャグがあってね。ルルーシュ監督っていいですよ。昔、『男と女』でカンヌを獲ったとき、『これで10年以上フランスの作家主義は遅れてしまった』ってヌーベルバーグの人たちは言ってたけど、僕もトリュフォーとかゴダールは好きだけど、でもそれとこれとは別。ああいう映像ってルルーシュしか撮れないと思うんですよ。カメラワークが相当斬新で、もともとパリでよく小銭を入れると音楽に合わせて映像が見られる『Scopitone』というものがあって、彼はその監督をやってたの。だから映像と音楽がすごく重要だってわかっていて、映画でも歌詞に主人公の気持ちを語らせたり、フランシス・レイも2曲書いているし、そういうところはちょっと感動しちゃいますよね」
野宮「この映画の冒頭でアンヌが『50年前の2人の恋は美しすぎて完璧すぎて、失うのは怖かった』って言ってますけど、実は前作の『男と女』も映画自体が、物語も音楽も映像も美しすぎて完ぺきすぎる映画だったから、その新作を作ろうというチャレンジは、すごいなと思いました」
高橋「たぶん、ルルーシュは最初この企画考えたとき、相当反対されたんじゃないかな? でもアヌーク・エーメの髪をかき分ける仕草も昔と同じだったし、若い頃とオーバーラップして画面が出てくるから、何の問題もないんですよ。あの頃の自分の感じと、自分がどんどん年を取ってきて、こうなっていく感じが。トランティニャンのその前の『アムール』という作品がアカデミーの外国映画賞を受賞したけど、そっちは老々介護で奥さんを…というストーリーで、かなり厳しい映画だったの。だから今回もそういうやつかなと思ったんだけど、そしたら年を取ることは悪いことじゃないよって」(後編に続く)
映画「男と女 人生最良の日々」は、1月31日よりTOHOシネマズシャンテ、Bunkamuraル・シネマほか全国で公開