“情報戦”のeスポーツでもトッププロが発信を続けた理由「配信を止めるのはプロとして違う」

デジタルカードゲーム「シャドウバース」のプロリーグである「RAGE Shadowverse Pro League」で、2019-20シーズン王者に輝いたAXIZ(アクシズ)に所属するRumoiは先日、YouTube配信で画期的なデッキを披露し、大きな話題を呼んだ。自身でも“情報戦”と認識するカードゲームの世界で、オープンな姿勢に踏み切った理由と、そこにある熱い思いを語ってくれた。今回は後編。

Rumoiはプロ選手として積極的な情報発信に意欲を見せる
Rumoiはプロ選手として積極的な情報発信に意欲を見せる

プロeスポーツチーム・AXIZのRumoi 自身が開発したデッキが大きな話題に

 デジタルカードゲーム「シャドウバース」のプロリーグである「RAGE Shadowverse Pro League」で、2019-20シーズン王者に輝いたAXIZ(アクシズ)に所属するRumoiは先日、YouTube配信で画期的なデッキを披露し、大きな話題を呼んだ。自身でも“情報戦”と認識するカードゲームの世界で、オープンな姿勢に踏み切った理由と、そこにある熱い思いを語ってくれた。今回は後編。(取材・構成=片村光博)

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 6月29日、「シャドウバース」では新パック「リナセント・クロニクル」が実装された。リリース後、早い段階で能力調整が施されるなど、大きなインパクトのあるパックとなったが、能力調整を誘引したと言われたのが、リリース初日にRumoiが開発したいわゆる“コンボエルフ”と呼ばれるデッキだ。YouTubeの生配信で尋常ではない勝率を記録し、ライト層まで含めて一気に広がりを見せた。だが、カードゲーム界の“常識”に照らし合わせれば、この流れは例外的だったとも言える。

「シャドウバースのようなカードゲームは、情報が大きな価値を持っていて、その情報は出さないほうが得なんですよね。今でこそシャドウバースも情報発信が盛んになっていますが、以前は閉鎖的で情報を外に出さず、“自分たちだけがいい思いをしよう”という傾向がありました。僕自身、プロになる前は発信する理由もあまりなく、表立った発信はまったくしていませんでした。

 でも、プロという立場になったからこそ、シャドウバースの面白さを知ってほしいと思って、本来なら出しても得にならないような情報でも『こういうことがあるんだよ』『こういうプレイをできるとより良くなるよ』と発信しています。YouTubeを始めたのも、それがきっかけです」

 もっとも、リリース初日から完成形が生まれるとは自身でも思っておらず、今回の件では葛藤もあったことを明かす。

「初日からそこまで完成度の高いデッキができるとは思っていなかったので、配信内でデッキを完成させていく過程を視聴者に見せられたらな、と思っていたんです。しかし、配信開始1時間くらいで当時の完成形のデッキがたまたまできてしまい……。能力調整が入るのも当然だろうなと、当時から分かるくらいの強さでした。正直に言って配信を切りたい気持ちもあったのですが(笑)、それで配信を止めるというのはプロとして違うなと。僕が公開しなくても、他の人に開発される可能性はありますしね。

 基本的に今はオープンにしています。可能な限り、発信できることは発信したい。その中で、大会で勝つために『ここから先は自分が勝つためにもストップしておこう』というところで止めておく、という感じですね。勝つための努力と、いろいろな人への情報発信を両立したいと思っています。僕は面白く発信するということがあまり得意ではないので、勝つために必要な動きや、『こういうことをすればゲームをより奥深く知ることができるよ』ということを、バランスを考えながら発信しています」

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