所属ラストマッチとしておこなわれた2020年1月26日大阪で、花月は岩谷と最初で最後のタッグを結成した。いままで組んだことがないのは意外でもあるが、それだけスターダムではユニット闘争が確立していたということでもある。最後の相手には渡辺桃＆ジャングル叫女(きょうな)を選んだ。桃と叫女は元タッグパートナー。新人時代に同じユニットでJKグリーンを名乗っていたが、いまでは袂を分かっている。そんな2人を指名したのには理由(わけ)がある。この2人にこそスターダムのトップに立ってほしい。現時点でのトップは岩谷、星輝ありさと言っていいだろう。ここにつづくと期待されているのが林下詩美、木村花、ジュリアといったところか。と同時に、ふだんの努力を見ているからこそ、生え抜きの桃と叫女こそがトップコンテンダーであるべきと花月は考えている。

　その思いが伝わったのか、試合はより激しさを増した。叫女は花月の必殺パターンを回避しつつ、毒霧を食らいながらも大奮闘。最後はここ一番で爆発させるジャングル(キン肉)バスターで花月からフォール勝ち。スポーツ歴を活かしたハンマースロー式パワーボムや、JKグリーンの連係は初心に戻った感覚か。よって、彼女が気づいたかどうかは別として、本来持っている独自性が蘇ったのだ。これは花月の目論見通り、未来につながる試合になったのではなかろうか。

　勝った叫女は、「この勝ちを絶対にムダにしません！必ず次につなげます！」と絶叫。勢いそのままに岩谷にもシングルマッチを要求した。挑戦を表明された岩谷は「次の防衛戦(2月8日後楽園、VS Sareee戦）の結果の後でやりたいと思ったらアピールしてきてください」と冷静な対応。「今日はそういう日じゃないよ」と、リング上の風景を“花月ラストスターダム”に戻してみせた。

　岩谷とのトペ・スイシーダ、ドラゴン・スープレックスなどの競演も成功させた花月は感無量。岩谷への感謝を述べるとともに、「負けてこんなに清々しいのは初めてかも」と素直な思いをマイクに乗せた。そして、本当のラストマッチとなる自主興行（2月24日、ところも同じエディオンアリーナ大阪第2競技場）での対戦相手を里村明衣子と発表。スターダム入団後も常に意識していた師匠とのシングルマッチに臨むという。が、試合直後は里村について多くを語らず、「今日はスターダムに浸りたいかな。明日からスイッチを入れ替えます」とコメント。大会のエンディングでは、スターダムの選手たちから胴上げされる花月の姿があった。所属として2年、関わってきたのが3年と、決して長期ではない。が、花月がもたらした功績はとてつもなく大きい。この日の試合そのものが、“花月がスターダムで過ごした時代”を物語っていた。