花月、所属最終試合 「岩谷に女子プロレス界の未来を託した」 スターダム1・26大阪大会

新日本プロレスをV字回復させたブシロード傘下に入り、好調な滑り出しをみせた女子プロ団体スターダム。新体制になってからの聖地・後楽園ホール大会も2度にわたり大成功をおさめている。だが、これを機に別の道を歩む決断を下した選手もいる。2019年12月24日後楽園で引退した葉月、そして2020年1月26日大阪で退団し、1か月後の2月24日に自主興行で引退する花月だ。

引退する花月を囲んでの集合写真【写真提供:スターダム】
引退する花月を囲んでの集合写真【写真提供:スターダム】

一度は考えた引退。一転、団体所属… その背景には現WWEの紫雷イオの存在

 新日本プロレスをV字回復させたブシロード傘下に入り、好調な滑り出しをみせた女子プロ団体スターダム。新体制になってからの聖地・後楽園ホール大会も2度にわたり大成功をおさめている。だが、これを機に別の道を歩む決断を下した選手もいる。2019年12月24日後楽園で引退した葉月、そして2020年1月26日大阪で退団し、1か月後の2月24日に自主興行で引退する花月だ。

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 花月は、現在岩谷麻優が保持するワールド・オブ・スターダム王座の元王者。2019年12月24日後楽園で岩谷とのリマッチに敗れたことで退団と引退を発表した。そのおもな理由は、2年前の入団時に掲げていた選手たちの底上げをある程度達成できたと実感できたから。また「新体制というタイミング」も決断できた理由のひとつ。そして最後の決め手となったのが、岩谷とのタイトルマッチ、その内容だった。「いまの岩谷なら安心して任せることができる」と感じた花月。前もって引退の意思を知っていたという岩谷は闘いをもって撤回させようとしていたのだが、その思いがかえって花月の気持ちを後押しすることになってしまったのはなんとも皮肉。しかしその一方で、岩谷の王者としての振るまいがいままでとは格段に違って見えたのもまた成長の証でもあった。

 そもそも花月は“岩谷狙い”でスターダムにやってきた。当時フリーの花月には、同世代の岩谷こそが好敵手になる存在と感じ取れたのだ。初対戦は2016年3月26日新潟・新発田。花月は松本浩代とのタッグで紫雷イオ(現WWE)&岩谷組の保持するゴッデス・オブ・スターダム王座(タッグ王座)の挑戦が決まっており、初遭遇は前哨戦の意味合いも込められていた。同年4月2日大阪でのタイトル戦で花月は岩谷から直接フォールを奪われたのだが、2週間後にヒールユニット大江戸隊に加入すると、まじめ一辺倒だったキャラクターを一新。同年6月5日名古屋では初シングルで岩谷のハイスピード王座に挑戦した。この試合でベルトには届かなかったものの、大江戸隊のメンバーを介入させ、新生・花月を強烈に印象づけたのだ。そして同年6月16日後楽園で花月はパートナーを木村響子(木村花の実母)に代えてゴッデス再挑戦。ここで岩谷から直接勝利を奪いスターダムでの初戴冠をやってのけるとともに、イオ&岩谷組のV10という長期政権にピリオドを打ってみせたのである。

 以来、両者は常にライバルとしてしのぎを削る関係になった。タイトルを懸けてはワールド王座で3回対戦(岩谷の2勝1敗)、ハイスピード王座では2回(岩谷の1勝、3WAYでクリス・ウルフが王者・岩谷に勝利)、ゴッデスでは4度対戦し2勝2敗。6人タッグのアーティスト・オブ・スターダム王座では3回闘っている。

 花月にとって大きな転機になったのが岩谷との出会いであり、また、継続参戦から入団を決意させたのも岩谷との対戦にあったと言えるだろう。が、その過程で花月がマットを離れようと悩んだ時期もある。2017年10月28日、花月は地元大阪で初めての自主興行を開催、イオとのシングルマッチを実現させた。デビュー9周年のその試合後、花月は1年後の10周年で引退するつもりだったと告白した。さらに、それを引き留めたのがイオだったことも明らかに。「イオさんの説得で考えが変わった」と話した花月はその4日後、スターダム入団、所属選手となることを発表した。その後、大江戸隊のリーダーを兼ねながら団体全体の底上げ、充実を推進していくようになる。

 そのなかで、いまひとつ突き抜けないでいたのが岩谷だった。旗揚げからリングを去ることなくずっと闘っている唯一の一期生。そこから“スターダムのアイコン”というニックネームがつけられたのだが、性格的なこともあり団体を引っ張る存在、つまり真のエースまでには至っていない。それが彼女らしさと言えばそれまでかもしれないが、花月はそこに物足りなさも感じていたのである。

 しかしながら2019年11月4日後楽園で久しぶりに赤いベルト(ワールド王座)を奪回すると、新体制を機にこれまでなかった責任感が岩谷に芽生え始めたようである。ポンコツ発言は相変わらずながら、試合については自信のほどがかつてないほどうかがえる。「スターダムのアイコンから女子プロレスのアイコンをめざす」と大きな野望も口にした。だからこそ、花月は岩谷に託せると確信できたのだ。

次のページへ (2/3) 花月が岩谷と最初で最後のタッグを結成した理由
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