「町全体をスタジオに」 ロケ地として注目の栃木県足利市、映像産業の裏側に迫る

栃木県の南西部に位置する足利市。かつては織物産業で名を馳せ、その高い品質は「徒然草」にも描かれるほどだったが、ここ数年は映像産業に注力。「映像のまち 足利」として、さまざまな映画、ドラマなどの撮影を誘致することに成功し、2019年にはスクランブル交差点を模したオープンセットまで誕生した。「海と砂漠以外はなんでもある」という足利市の映像産業の裏側を、「映像のまち推進課」の相澤直人さんに聞いた。

足利市「映像のまち推進課」の職員は6人。少数精鋭で業務にあたっている【提供:足利市映像のまち推進課】
足利市「映像のまち推進課」の職員は6人。少数精鋭で業務にあたっている【提供:足利市映像のまち推進課】

ロケ地としてニーズが高まっている足利市 行政による撮影支援で信頼度高まる

 栃木県の南西部に位置する足利市。かつては織物産業で名を馳せ、その高い品質は「徒然草」にも描かれるほどだったが、ここ数年は映像産業に注力。「映像のまち 足利」として、さまざまな映画、ドラマなどの撮影を誘致することに成功し、2019年にはスクランブル交差点を模したオープンセットまで誕生した。「海と砂漠以外はなんでもある」という足利市の映像産業の裏側を、「映像のまち推進課」の相澤直人さんに聞いた。(取材・構成=安藤かなみ)

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 足利市が撮影支援を行うようになったきっかけは、30年前にさかのぼる。1991年に放送されたNHK大河ドラマ「太平記」のロケ地の一つとして協力し、それ以降の撮影支援を「細々とやってはいた」と相澤さん。現在の「映像のまち推進課」は、前市長が2014年にとなえた「映像のまち構想」からスタートした。撮影支援を中心に町おこしや地域活性化をはかるため、翌15年に「映像のまち推進課」が設立された。しかし、当時の職員には撮影支援などのノウハウもなく、苦労したという。

「推進課ができる前は、当時の観光交流課の業務の一環の中で細々とやっていました。その担当が推進課の課長になりましたが、その部下は完全に素人でしたね」

 当初は素人集団だった推進課だったが「おもてなしの精神」のもと、着実に映像作品の誘致に成功していく。推進課の主な仕事はロケ地使用などの許認可だが、「丁寧にやってあげようというおもてなし業務を地道にやってきました。(推進課の設置から)年数がたって、かゆいところに手が届く……じゃないですが、業務の進め方が分かってきました」。

 許認可の他に、制作会社から提示された企画書や台本から、イメージに合った撮影場所の提案も行う。「うまく合う撮影場所を常にインプットしています。日々、撮影がないときも市内を回って情報を収集しています」と言う相澤さん。地元を熟知する職員ならではの土地勘も強みの一つだ。

 東京から北に80キロに位置する足利市は、高速道路を利用すれば都内から1時間半でアクセスができ、その利便性も利用者に受けているようだ。相澤さんは「海と砂漠はないですが、廃校を利用した学校と、最近はスクランブル交差点を模したオープンセットもあります。それ以外でも、“町全体をスタジオに”ということで、積極的に誘致をしています」とロケーションの豊富さも強調する。

「朝6時に東京を出発すれば7時半には足利に到着できて、8時から撮影ができる。遠からず近からずの移動距離も適当で、その中でいろんな構想ができるから足利市はいいねと制作側の方にもお声をいただくことがあります。そして、市民の方も協力的でありがたいというお声もいただきます」

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