葉加瀬太郎、50代でようやく見つけた演奏の面白さ「ミュージシャンなら楽器で話せ」

バイオリニストで作曲家の葉加瀬太郎(53)が18日、ソロデビューから25年目を迎え、ニューアルバム「SONGBOOK」をリリースした。史上最もエキサイティングで美しいアレンジに生まれ変わった「情熱大陸」をはじめ、今までとは一味違う躍動感や生命力の強い作品に感情が揺さぶられてしまう。それもそのはず。背景にはもっとワクワクしたいという葉加瀬の大きな決断と新たな自分探しの旅が始まったからだ。

ミュージシャンとしての大きな転機を明かした【写真:塩見徹】
ミュージシャンとしての大きな転機を明かした【写真:塩見徹】

新しいバンドメンバーは僕の言うことを一切聞いてくれない

 バイオリニストで作曲家の葉加瀬太郎(53)が18日、ソロデビューから25年目を迎え、ニューアルバム「SONGBOOK」をリリースした。史上最もエキサイティングで美しいアレンジに生まれ変わった「情熱大陸」をはじめ、今までとは一味違う躍動感や生命力の強い作品に感情が揺さぶられてしまう。それもそのはず。背景にはもっとワクワクしたいという葉加瀬の大きな決断と新たな自分探しの旅が始まったからだ。(インタビュー・文=福嶋剛)

「僕は全力でオフを楽しむのが好きなんです。休みになると朝4時に起きて、5時にはもう船に乗って釣りに出かける。昨日はハタハタとカサゴがちょっとだけでしたね。ものすごく暑かったんだけど潮風がとても気持ちよくてね。水着で日焼けする気満々でしたよ(笑)」

 小麦色に焼けた顔で現場に登場した葉加瀬は、前日の釣りについてカメラマンと談笑しながら撮影が始まった。釣り歴は10年ほどだが、スタッフも止められないくらいの熱の入れようだという。改めて釣りの魅力について聞くと。

「大きなマグロを狙うのも、小さなイワシを釣るのも同じくらい楽しいですよ。でも釣れすぎるとあんまり面白くない。なぜかというと僕はルアーで魚と駆け引きをしたいんです。何度も何度も失敗を繰り返して、ルアーの色や針の大きさ、重りを変えて、あらゆる角度から答えを探していくというゲームなんです。だからアジの群れにサビキを落としてどんどん釣るようなことはやらない。それは漁になりますからね。まあそんなことばっかりして楽しんでますよ(笑)」

 オフはバイオリンを釣り竿に持ち変えるが、自分だけの答えを導いていくプロセスは音楽と変わらないようだ。

「モーメント(=瞬間)をどうやって楽しんでいくか。これは音楽だけじゃなくて人生にもつながることですよね。楽しみたいなら時には殻を破らないと。そこで自分だけの教科書を見つけられたら何にも増して楽しいじゃないですか。楽しみ方の1つとして何もしない一日があっても良いと思うんです。今日はずっと寝ようという意思のもと、全力で何もしない。これはきっと最高の休日になりますね。ところが迷っているうちに夕方になっちゃったとか。目的があやふやな瞬間を過ごしてしまうことが僕は子どもの頃から苦手なんです。

 例えば病院で1時間待つとします。この時間を嫌だと思って待つか、ちょっと人間観察してみよう、本を読んでみようと楽しんでみるか。同じ1時間だけど、いろんな選択がありますよね。僕はいつも自分のセンサーをオンにして、飛び込んでくるものや匂い、景色、出来事……そういうものを感じながら遊ぶのが好きなんです。こうすることで今までとは違う景色が見えたりするんですよ」

 2020年、葉加瀬はミュージシャンとして大きな転機を迎えた。

「昨年のツアーでベースとドラムスが新しいメンバーに代わりました。すると今まで感じたことのない異次元の体験が目の前で起こったんですよ。何がすごいかって? 僕の言うことを一切聞いてくれないの(笑)」

 ドラムスは屋敷豪太、ベースは渡辺等。ともに国内随一のベテランミュージシャンが加わった。なかでも屋敷は、海外で成功を収めたレジェンドであり、葉加瀬にとって憧れの存在。「いつか一緒に全国ツアーを回りたい」若い頃からの夢がようやく実現した。新しい“葉加瀬太郎バンド”は、昨年の全国ツアー「コンサートツアー2020~FRONTIERS」でお披露目となったが、そこで今までにないショックを受けたという。

「僕は年間50本ぐらいのツアーでも毎回必ずコンサートが終わると、演奏はもちろん、照明の当て方に至るまで一つ一つ細かくチェックしながら『ここがダメ』『あそこを変えたい』と“ダメ出し”をして、翌日のリハーサルでブラッシュアップしていくんです。だから今までは僕のリクエストに答えてくれるすご腕の若手ミュージシャンと一緒にやってきたんです。今回も新メンバーになって、初めはこれまで通り『こうしてほしい』と伝えるんだけれど『はいはい』って生返事だけで誰も僕の言うことを聞いてくれない(笑)。もっと言うと、聞いてくれないどころか毎日同じことすらやってくれないんですよ」

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