お花畑、三途の川、幽体離脱…よく聞く臨死体験のからくりは? 心理学者が解説
なぜお花畑と三途の川が現れるのか
そこで疑問。人は死ぬとき、本当にお花畑を見るのだろうか。
「臨死体験や死亡の際に見えるとされるお花畑については諸説あり、実は花を見ていないという考えもあります」
こう解説するのは明治大講師の関修氏(心理学)だ。
「人は死ぬとき、死んではいけないという自己防衛本能が働き、脳内にさまざまな物質が分泌されます。そのため赤やピンク、緑、黄色、オレンジなど、人が美しいと感じる色が見える。こうした幸福の色が『この世はこんなに美しいのだ。だからあの世に行ってはならない』と引き留めようとするのです。この色とりどりのイメージが、花が咲き乱れているように思えるため、今際の際に『美しいお花畑を歩いている』と言い残すのだと思われます」
八代氏は手術台の自分を俯瞰して見ていたことを記憶している。関氏によると、これは人間の自我が二重構造になっているからだという。一つは何かを体験している自分。もう一つは体験している自分を見ている自分だ。後者の自分が自己の姿を思い描くため、病室を俯瞰している光景を思い浮かべるそうだ。
また、三途の川はもともと人間にとって川が境界線のため、そこを超えると戻って来られないという意識が生じるのだという。ギリシャ神話にも同じ概念の「嘆きの川」が出てくるそうで、そもそも日本人に馴染みの深い神道とギリシャ神話には共通性があり、それが三途の川に結び付いているそうだ。
「キリスト教の場合は、人間は天国に召されるため垂直方向に幽体離脱します。これに対して日本人の幽体離脱は三途の川に向かう。つまり水平方向に移動するのです。実は神様がたくさん出てくるギリシャ神話も八百万の神の神道も多神教。両者には、人は生まれ変わるという輪廻転生の概念があるため、途中で戻ってくる境界線が存在する。それが日本では三途の川であり、ギリシャ神話では嘆きの川なのです」(関氏)
日本とギリシャ……意外な共通点があるようだ。