有森也実が「潮時」と思った女優人生の危機 37年間所属した事務所退所の理由を告白
女優の有森也実が2019年に続いて17日に初日を迎えた舞台「化粧二題」(紀伊国屋サザンシアターTAKASHIMAYA)に挑んでいる。井上ひさしさんの作品の一人芝居。同作と出会い、有森は女優を辞めずにすんだという。また昨年6月末には15歳のときに所属した事務所を退所しフリーとなった。女優人生の危機、フリー転身の理由、これからの生き方を聞いた。
コロナ禍で演じる一人芝居「化粧二題」有森「お客さまと対話したいです」
女優の有森也実が2019年に続いて17日に初日を迎えた舞台「化粧二題」(紀伊国屋サザンシアターTAKASHIMAYA)に挑んでいる。井上ひさしさんの作品の一人芝居。同作と出会い、有森は女優を辞めずにすんだという。また昨年6月末には15歳のときに所属した事務所を退所しフリーとなった。女優人生の危機、フリー転身の理由、これからの生き方を聞いた。(取材・文=中野由喜)
「コロナ前と今では、舞台に立つ感覚は全く変わりました。劇場という空間の中でお客さまと一緒に作品を作っていくことが演劇なのだ、ということをあらためて強く感じました。お客さまの前で、お客さまのそれぞれの思いの中で、私たちが演じる物語、役柄と交差する空気が欲しい、必要だと思いました。お客さまと対話したいです。井上ひさし先生が『お米とか卵とか日常に必要な物のように映画や演劇があるべきだ』というような言葉を生前、話していました。お客さまが1人でも来てくださるなら、その方にとっての、その日の卵、その日の牛肉でありたいと思います」
作品は、昔、子どもを捨てた大衆演劇の女性座長・五月洋子が、芝居によって自身を許し、ごまかしていたことに気づき、新しい自分を築いていく自己発見劇。
「コロナ禍でみなさんも孤独と向き合ったかと思います。演じる座長も孤独の中で闘ってきた女性で弱さと強さを持っている人。お客さまと近くなった気がしています。果たせなかったこと、ざんげとか無念を、演じることで消化する感覚は、女優だから分かるんです。演じていないと、おかしくなってしまうような。だから五月洋子が我が子を捨てた痛みを力にして座員を引っ張っていったりするのは分かります」
同作への思いの強さを感じる。有森の女優人生にとって、どんな位置づけなのか。聞くと衝撃的な言葉が飛び出した。
「実は、この話(19年初演)を頂く前はくじけていました。そろそろ、潮時だなと。話を頂く3、4年ぐらい前から本当に自分で、何かやらなければ、動かなきゃと思い、協力して欲しい方に声をかけたりしていました。でも形になりにくく、女優はもうそろそろ、いいかなと本気で思っていたとき、このお話を頂きました。渡辺美佐子さんがずっとやっていた女性座長をやらせていただくなんて、後先、考えず『やらせていただきます』と言いました」