【週末は女子プロレス#9】青野未来、“惜しい”からの脱却へ 8・13初戴冠を目指す
「『なんか惜しいよね』って、よく言われるんです」
アクトレスガールズは基本的に芸能活動との兼任だ。たとえば舞台なら稽古に追われ、プロレスならトレーニングは欠かせない。両立は決して簡単ではないだろう。とくに彼女たちの場合、「芸能人が片手間でやっているプロレス」という偏見の目で見られがち。だからこそ、選手たちは基本を大切に闘っている。青野も例外ではなく、得意技の“人間風車”ダブルアームスープレックス(しかも正調!)の美しさから、プロレスに対する姿勢が伝わってくるはずだ。
ではなぜ、ダブルアームスープレックスという古典技をあえて使うようになったのだろうか。故ビル・ロビンソンが大旋風を巻き起こした昭和プロレスをリアルタイムで体感していないことだけは確かだが……。
「まったくの無知状態でプロレスに入ったんですけど、代表から『やってみたら?』とアドバイスされて、ロビンソンさんの動画を見たりして研究しましたね。それこそリングで練習できないときは、畳の上に座布団を何枚も敷いて、何度も何度も練習を重ねました」
練習時以外の特訓も功を奏し、次第に筋肉も付いてきた。今でこそ美しいブリッジでジャーマンスープレックスを得意とする女子レスラーは増えたが、ダブルアームスープレックスは意外な穴場でもある。
この技の習得に付き合ってくれたのが、青野よりも先にデビューした関口翔だった。関口とは自然にタッグを組むようになり、最近ではKKMK(カケミク)というチーム名もついた。この2人で結果を出したいという意識の表れだ。実際、6・19新木場では、タッグマッチで勝利した青野が本間多恵を呼び込み、AWGタッグ王座への挑戦を表明。初代王者が受諾し、8・13後楽園でのタイトルマッチが決定した。
KKMKは新設のタッグ王座決定トーナメントにエントリーし、決勝戦に進出していた。が、2・11新木場で本間&尾崎組に敗れベルト奪取には届かなかった。このとき、本間の関節技にギブアップしたのが青野。あの悔しさは今も消えていない。だからこそ、彼女は再戦を申し入れたのである。
もしかしたら、デビュー以来初の自己主張だったのかもしれない。実際、このアピール後、彼女は大会の締めを初めて任された。慣れないマイクに照れることしきりだったが、これがデビュー以来4年間の現実でもあった。
「『なんか惜しいよね』って、よく言われるんです」と、彼女は苦笑する。これはレスラー青野未来を知る人、最大公約数の意見ではなかろうか。ひとつ殻を破れば突出した存在になれそうなのに、飛び抜けそうで飛び出せない。自分自身にブレーキをかけているように見えなくもない。だが、ここにきて本人もそれを自覚するようになってきた。殻を破るには形がほしい。それが関口とともに挑戦するタッグのベルトなのである。