「学生プロレスの星」が無念の負傷欠場 焦らず治療し復活ロードを進むべし【連載vol.52】
稲村は悔しさをバネに急成長する選手の典型的な例
残る公式戦は勝ち点14の田中将斗戦(7月24日、大阪大会)。ノア5・3配信マッチで初のシングル対決を果たしたが、スーパーフライで敗れ去った。田中に「タイヤばかり投げていてどうかな、と思っていたが、タイヤみたいにポンポン投げられて気づいた。彼はこれでいい。これからいろんな人間と闘っていくことで、タイヤ以外のことは身に付いていく。3年で一つ、人よりも秀でているところがあるのは素晴らしい」と認めてもらったのだ。
稲村は喜ぶかと思いきや「悔しさがこみあげてきた。田中将斗を超えてみたくなった」と火祭り参加を決めたのだった。それだけに、田中戦を目の前にしての負傷欠場は無念でしかないはず。
とはいえ、ここまでの火祭り公式戦4試合で、稲村は大きく成長した。ノアではシングルマッチが組まれるのは、なかなかない。昨秋のノアのシングルリーグ戦「N-1 VICTORY 2020」Bブロックでは5戦全敗。出場12選手中、ただ1人の全戦黒星という屈辱を味わわされた。その悔しさは決して忘れていない。稲村は、悔しさをバネに急成長する選手の典型的な例だろう。
最近はかなり変わってはきたものの、学生プロレス出身者を色眼鏡で見る風潮はまだ残っている。学プロのチャンピオンからプロレスの王者になった成功者もたくさんいるが、稲村ほどスピード出世を遂げている者は珍しい。稲村の踏ん張り、成長がまた時代の扉を開け、後に続く者の希望の星になるかもしれない。
期待が大きかっただけに、周囲も残念がっているが、本人が一番無念だろう。一日も早くけがを治し、さらにパワーアップして戻ってきてほしい。
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【写真】タイヤを手にして入場してくる稲村愛輝