BTS、大ヒット曲「Butter」に登場するホットケーキ 世界的な有名童話が元ネタか
世界的に有名な童話「ちびくろ・さんぼ」が「Butter」のMVに影響?
2018年8月の韓国・ソウルオリンピック主競技場から19年6月のロンドン・ウェンブリー・スタジアムまでのBTSの公演に同伴したソウル大学のホン・ソクキョン教授(言論情報学)は、BTSがMVに盛り込んだこうした謎かけや仕掛け、意味ありげな表現を「ラビットホール」と呼んでいる。ルイス・キャロルの小説「不思議の国のアリス」では、アリスがウサギを追いかけて現実世界から不思議な世界に入りこんでしまう。不思議な世界への入り口、つまり「異なる層の物語をつなぐ結び目」が「ラビットホール」というわけだ。(※1)
この「ラビットホール」をめぐって世界中のARMY(ファンの呼称)が日夜謎解きに挑戦し、得られた考察をSNSで発信している。「Butter」のMVにも多くの「ラビットホール」が隠されていそうだ。開始53秒あたりでバターが乗ったホットケーキが登場し、メンバーのJ-HOPEがスライスしたバターをフォークで口に運ぶところでMVは終わる。このエンディングには何らかの意味が込められているのではないか。参考になりそうなのが童話「ちびくろ・さんぼ」だ。(※2)
少年サンボがジャングルで4頭のトラと遭遇しカラフルな上着、ズボン、靴、傘をトラに奪われてしまう。それらを身に着けたトラたちは「おれがいちばん立派だ」といがみ合い、隣のトラのしっぽに食いついて木の周りをぐるぐると走り回っているうちに、どろどろに溶けてバターになってしまう、という寓話だ。「Butter」のロゴと、「ちびくろ・さんぼ」に登場するバターのイラストのタッチはよく似ているように見える。(※3)
しかも、「ちびくろ・さんぼ」は溶けたバターを使ってホットケーキを作り、父と母とサンボがホットケーキをたらふく食べるという楽しいラストとなっている。「バターがとろけるホットケーキ」が強い印象を与えている「Butter」のMVは、この童話からヒントを得ている可能性がある。
では、なぜバターを食べる役回りがJ-HOPEになったのか。考えられるのは彼の名前だ。本名はチョン・ホソクで、漢字は「鄭號錫」。「號」の字の中に「虎(トラ)」が入っている。韓国の山林には古くからトラが多く生息していた。建国の物語である檀君神話にはクマとトラが登場。歴史的にもトラを描いた絵画は数多く残っており韓国人にとってトラは今でも身近な存在だ。歌詞の冒頭で「悪者(criminal)」という単語が登場するが、これもサンボから衣服類を奪ったトラの悪事とつながっているように思えなくもない。