BTS、新曲タイトルに驚愕の仕掛け 世界中のファン「天才」「鳥肌立つ」「泣ける」と仰天

BTSの新曲「Permission to Dance」のミュージックビデオ(MV)再生回数が11日に1億回を超えた。同曲は9日午後1時に全世界で同時公開され、公開時点での最大同時アクセス者数は230万人を超えるなど世界中から注目された。同曲のタイトルをめぐってはさまざまな分析が展開されている。「Permission to Dance」の文字を並び替えるとまったく違う言葉が出現するというのだ。いったいどういうことか。

BTSの新曲「Permission to Dance」には国際手話や紫色の風船が登場【写真:(C)BIGHIT MUSIC】
BTSの新曲「Permission to Dance」には国際手話や紫色の風船が登場【写真:(C)BIGHIT MUSIC】

「Permission to Dance」は「NO PANDEMIC STORIES」?

 BTSの新曲「Permission to Dance」のミュージックビデオ(MV)再生回数が11日に1億回を超えた。同曲は9日午後1時に全世界で同時公開され、公開時点での最大同時アクセス者数は230万人を超えるなど世界中から注目された。同曲のタイトルをめぐってはさまざまな分析が展開されている。「Permission to Dance」の文字を並び替えるとまったく違う言葉が出現するというのだ。いったいどういうことか。(取材・文=鄭孝俊)

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 文字を並び替えることでまったく別の意味にしてしまうことをアナグラム(anagram)という。例えば「evil(悪)」を反対から読むと「live(生)」となり違う言葉になる。実は「Permission to Dance」にもアナグラムの仕掛けがあるというのだ。

 MVの終盤に「PERMISSION TO DANCE」というオレンジ色の文字が浮かび上がるが、よく見ると文字の大きさがふぞろいであることに気が付くはずだ。大きく書かれた文字と小さく書かれた文字の2種類がある。大きい文字を抜き出して順番に並べると「P」「M」「D」「N」「C」。「N」と「M」を入れ替えると「P」「N」「D」「M」「C」となる。「PNDMC」、すなわち「PANDEMIC(パンデミック、世界的大流行)」だ。

 残った文字も入れ替えて並べ直すと「STORIES ON PANDEMIC」という文に変換できる。「パンデミックに関するストーリー」という意味になるのなら何やら恐ろしげである。しかし、「ON」のスペルをひっくり返して「NO」にすると「NO PANDEMIC STORIES」という文ができあがり、「パンデミックが終わるストーリー」といったように意味が逆転するのだ。どうしたらこのようなアイデアが思い浮かぶのか。仰天の仕掛けにネット上では各言語で「故意なのか偶然なのか」「絶対天才」「鳥肌立ってる」「泣ける」などと驚く声が続々と書き込まれている。

 ほかにも同曲にはさまざまな意味が仕込まれている。冒頭に登場するウエートレスが運んでいるのはバターが乗ったパンケーキで、現在大ヒット中の「Butter」のエンディングシーンとつながっている。店内は閑散としており客らしき姿は見えない。コロナ禍で経営が苦しくなっている飲食店を表現しているようだ。ウエートレス役は1994年生まれのモデルで女優のリア・キム・トンプソン。母親が韓国人で父親は白人というミックスルーツだ。

梨泰院クラスとバンクシーをオマージュ

 次いで、制服姿の男女3人の学生が空高く飛んでいく紫色の風船を見つけるシーン。画面にはソウルの観光スポットである南山タワーが映り込んでいる。学生たちがいる場所は、韓国ドラマ「梨泰院クラス」で俳優のパク・ソジュン演じる主人公パク・セロイが希望を胸にたたずんだ緑莎坪(ノクサピョン)歩道橋だ。BTSメンバーのVが同ドラマの劇中歌「Sweet Night」を担当したことはよく知られている。

 その紫色の風船については英国を拠点とする匿名の路上芸術家・バンクシーの作品をオマージュしたとの見方がある。バンクシーには「Girl with Red Balloon(赤い風船と少女)」という反戦メッセージを込めた有名な作品がある。ロンドンのテムズ川沿いにある階段の壁面に描かれたこの絵には、少女、空を飛んでいく赤いハート形の風船、「THERE IS ALWAYS HOPE(いつも希望はある)」という文字が配置されている。風船の色を「赤」からBTSがよく使うキーワード「紫」に変えたうえで、コロナパンデミックで傷ついた子どもたちへの共感と支援を呼びかけているようだ。実際、「Permission to Dance」のMVには年齢も人種も異なる子どもたちが多く登場している。

国際手話は「障害者プライド月間」と連動

 MV全体を通して見ると、清掃員、郵便配達員らコロナ禍でも外出して仕事をしなければならない人たちが次々と登場する。そんな人々への感謝の気持ちが映像に込められているようだ。また、彼ら彼女らの体型もさまざまだ。これは「痩せている体が美しい」といった考え方を見直し、ありのままの体を愛そうという社会運動「ボディポジティブ」の考え方に通じており、「自分自身を愛そう」というBTSのメッセージと重なる。

 ほかにも、BTSのメンバーは国際手話を使って「楽しい」「踊る」「平和」を意味するパフォーマンスを披露している。MVを注意深く見ると事務所のシーンでは「disABILITY(障害)」「RESOURCES(支援、資源)」と書かれたスローガンが壁に張られている。1990年に制定されたアメリカ障害者法は障害者への差別禁止と機会平等の実現を目指しており、7月は「障害者プライド月間」として障害者の権利を啓蒙する活動が行われる。「disABILITY」「RESOURCES」という言葉はこの「障害者プライド月間」と連動していたのだ。ちなみにBTSメンバーのRMは2019年、聴覚障害を持つ幼稚園から高校までの学生120人が通う韓国の特殊学校に「学生たちの音楽教育のために使ってほしい」として1億ウォン(約960万円)を寄付している。

多様性尊重のメッセージを世界に向けて発信

「Permission to Dance」の制作には世界的な人気を誇る英シンガー・ソングライターのエド・シーランが参加しており、自身のツイッターに「少し前に書いたこの曲が世界的な舞台で聴かれ、才能ある人たちに歌ってもらえてとても幸せ」と書き込んだ。歌詞に登場する「エルトン・ジョン」はエドが尊敬する英シンガー・ソングライターで、過去に両性愛者であることを公表している。振り返ってみれば「梨泰院クラス」の主要登場人物も前科者、ソシオパス、元ヤクザ、トランスジェンダー、韓国とアフリカのミックス…など社会の周縁に置かれたマイノリティーが幸せを手に入れる物語だった。

「Permission to Dance」のMVは練りに練られたアイデアをベースに、人々の多様性(ダイバーシティ)を尊重しようというメッセージを世界に向けて発信している。「NO PANDEMIC」の日は必ず来る――。「Permission to Dance」は愛に満ちあふれた作品といえそうだ。

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