芸能界から引っ張りだこ「鳥久弁当」 “創業93年”の今昔物語 人気の秘密を社長に直撃

創業100周年に向けて

 念のために説明すると、鳥久弁当に入っているから揚げは、一般的に想像するから揚げとは違う。

「普通のから揚げはうどん粉、小麦粉を使っていると思うんですけど、ウチは片栗粉を使うんです。おそらくその場合は『竜田揚げ』と呼ぶのかもしれませんけど、ウチのから揚げは完全に衣になっていますね。このカタチは私が生まれる前からあったので、詳細は分かりませんけど、『竜田揚げ』という呼び方は関西のほうが多いかもしれないですね」

 また、鳥久弁当では、各弁当に使用される割り箸にもこだわっている。

「そこまでこだわっている気はないんですけど、少し前までは中国産を使っていたんですね。それがある時期に値上げの話になった。それならってことで国産に変えようと思って、奈良の業者さんに相談して、現場を見せてもらったんです。確かに国産の割り箸にすると、それまでよりもコストがかかってしまう。ただ、その業者さんは割り箸を作るのに木の廃材を使っていたし、なにより13工程なんていう手間をかけた上で作っているんです。そんな話を見聞きしたらもう、多少のコストがかかるのは目をつぶろうと思いましたよ」

 さらにいえば鳥久弁当では、弁当を包むビニール袋にも工夫がされている。

「ウチとしてはお弁当をそのまま渡したくはないんですよ。もしかしたら中身の汁が出てしまうこともあるだろうし、そのままバッグに入れるのはどうなのかなと。そんなことを心配していたら、あの白いビニール袋は手下げ(取っ手)がなければ無料で配布していいっていう話を聞いて。その理由もよく分からないけど、だったらってことで、今は業者さんに頼んでその部分がない白いビニール袋を弁当に包んでお客様にお渡ししています。皆さん、喜んでくれますね」

 そういえば小原社長は、2か月ほど前のあるSNSの投稿に、こんなコメントを残していた。一部を抜粋する。

「アドバイザー~コンサルタントも、弊社には必要だと思ったことがありません。これはコンサルをdisっているのではなく、雇われ社長と同じで、できることは限られている…という意味です。創業者、所謂社長は、悩んで、悩んで大きくなるもの。悩む時間がとても大切だと私は考えています」

 この話を小原社長に振ると、「そんなこと書いたかな(笑)」とスルリとかわされてしまったが、規模の大きさによって違いはあるものの、悩まずにトップに立った人間はいないだろう。それだけは間違いないように思う。

 小原社長は現在、63歳。

「責任もあるから70歳まではやって、後は次世代に任せて行きたい。今年で創業93年。私がやってきたのは約3分の1。それと、あと7年すると創業100周年になるので、そこでは簡単に何かをやろうかと思っています」

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