待望の3冠ベルト獲得の新王者がコロナ禍のファンへエール「人生はチャレンジだ!!」

頭からすっぽりかぶったフードをはじめ、何から何まで全身黒ずくめのいでたちで登場したジェイク・リー。スター・ウォーズのダース・ベイダーを思い起こした人もいるのではないか。声を出すことを規制された観客席を、歓声ともため息とも思える声にならない声が支配した。

とうとう手にした3冠ベルトにも笑顔は見せないジェイク・リー【写真:柴田惣一】
とうとう手にした3冠ベルトにも笑顔は見せないジェイク・リー【写真:柴田惣一】

異例づくしの第64代王者を決する巴戦

 頭からすっぽりかぶったフードをはじめ、何から何まで全身黒ずくめのいでたちで登場したジェイク・リー。スター・ウォーズのダース・ベイダーを思い起こした人もいるのではないか。声を出すことを規制された観客席を、歓声ともため息とも思える声にならない声が支配した。

 新型コロナ禍で波乱続きだった全日本プロレスの6・26東京・大田区総合体育館大会。当初は5月16日に予定されていたが延期されたうえに、王者・諏訪魔がコロナ陽性となり急きょ、欠場。大会パンフレットの冒頭インタビューには「全日本プロレス50周年を王者で迎えたい」と、諏訪魔の熱い思いが掲載されている。

 挑戦者に決定していたジェイクに加え、名乗りを上げた宮原健斗、青柳優馬が3冠戦史上、初となる巴戦で第64代王者を決するという異例づくし。ただ「3冠」32年の歴史、それ以前には日本プロレスの父・力道山から続くインターナショナル王座、馬場の代名詞だったPWF王座、猪木も保持したUN王座の系譜を継ぐ唯一無二のベルトであることは揺るぎもない。

 抽選の結果、宮原VS青柳でスタート。宮原が青柳を下したが、いかんせん激戦のダメージは否定できない。満を持していたジェイクが粘りに粘る宮原をバックドロップで下し、青柳と向かい合う。激闘の末、D4C(垂直落下式ブレーンバスター)でジェイクが青柳の野望を打ち砕き、この日、公開されたオリジナルの3本のベルトと3冠ベルト、計4本の王者の証しを手にした。

 右手で天を指さすジェイク。王手をかけながら、なかなか獲得できなかったマット界の至宝だが、喜びは一瞬のことだった。ニコリともせずに諏訪魔に「早く戻ってこい。お前を倒して専務業に専念させてやる」と呼びかけた。

 そして「人生はチャレンジだ!!」と強調。ジャンボ鶴田さんの墓石に刻まれている言葉である。「俺はチャレンジし続けた。その結果、俺はこの結果を導き出した。見ているヤツらもこんな情勢だけど、落ち込んでいるんじゃねえ。どんな手を使ってもいい。犯罪だけは犯すな、ですけど」と、コロナ禍にある皆にメッセージを発した。

 TOTAL ECLIPSE(皆既食)のメンバーたちと祝杯をあげ「よし、以上だ」とさっそうと引き揚げていくジェイク。笑顔の似合うイケメンだったが、今年2月、黒く染まってからは、ジェイク・スマイルは封印されてしまった。

 2011年に全日本プロレスでデビューしたものの、総合格闘技に転身し、15年に再入門。一から出直し、トップを目指してきたが、その道のりは決して平坦ではなかった。

 19年正月、3冠戦線が話題になると「俺しかいないっしょ」と言い放ったジェイク。王手をかけながらなかなか奪取できず、20年初頭の食事会で「今年、3冠とれなかったら、もう応援しません」と、ジェイクに面と向かって突き付けたファンがいた。なんともやりきれない表情を浮かべて「はい、頑張ります」と答えていたが、何とも失礼な話だ。その後も、にこやかに杯を重ねていたものの、その胸中やいかに、である。

 コロナ禍もあり大会数の減少もあったが、あれから1年半。ジェイクはチャレンジを続け、ついに栄冠をつかんだ。ベルトは獲得するよりも防衛することの方が難しい。全員のターゲットになる。

 早速、芦野祥太郎、石川修司が飛び出してきた。「もう巴戦はこりごりだから、お前たちで挑戦者決定戦をやれ」とクールに応じたジェイク。万人をとりこにするスマイルをいつかは披露してくれるはず。それまで「ダーク・ジェイク」を楽しもう。

次のページへ (2/2) 【写真】TOTAL ECLIPSEのメンバーと祝杯をあげたジェイク・リー
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