ピン芸人→演劇人→映画監督 デビュー作で映画祭3冠の奇才・31歳新人監督の素顔
演劇出身、今後は映像にも力「表現手法は全く違うけど、根本的な部分は通じている」
好きなテーマは失踪・不在だ。「理想郷はない、みたいな話が好きです。今回の映画で言えば、冒頭で描いている前原君と奈緒ちゃんの100%幸せな時間って、続かないんじゃないかなと思っている。だから、みんなが楽しいと感じている幸せな空間にいるとすぐ怖くなったりします。楽しいことは長くは続かないと思っているから。友だちからは『そんなんで、生きてて楽しいか?』と言われますが、すごい喜んだり、本当に幸せって思っちゃうのが怖いんです。だから嫌なことがあっても大丈夫なように、予防線をはっておきたいのかな」
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新垣結衣らがいる大手芸能事務所「レプロエンタテインメント」にクリエーター兼俳優として所属。「所属していてありがたいのは一緒に企画のために悩んで、考えてくれ、その成功を期待してくれるマネジャーさん、スタッフさんがいることです。誰かが寄り添ってくれるって、ものづくりには欠かせない重要なことだと思います」と話す。
演劇出身だが、今後は映像にも力を入れていきたいという。好きな監督は「情事」のミケランジェロ・アントニオーニ、「ブルジョワジーの秘かな愉しみ」のルイス・ブニュエル、日本では成瀬巳喜男、濱口竜介。「名前を挙げると、詳しいと勘違いされるんですけど、映画はそんなに偉そうに言えるほど多く見ているわけではないと思います。演劇と映画で、その表現手法は全く違いますけど、根本的な部分は通じている。今回やってみて、映画という器と、自分のやりたいこととの間に、一定の親和性を感じることができました」
4月には熊本出身の行定勲監督がディレクターを務める「くまもと復興映画祭」に初参加した。「映画だけでなく、映画祭に対する行定さんの力強い演出力を肌で感じて、感動しました。また必ず参加したいです」。異色の新人監督は、次作でも思いもつかない作品を生み出してくれそうだ。
□山西竜矢(やまにし・たつや)1989年12月26日、香川県出身。同志社大学卒。劇団子供鉅人への客演参加を機に、2014年より劇団員となる。俳優として舞台・映像で多数の作品に出演する一方、脚本・演出について独学で学び、16年に代表を務める演劇ユニット「ピンク・リバティ」を旗揚げ。本格的に脚本・演出業を開始する。17年には脚本・監督した短編映画「さよならみどり」が第6回クォータースターコンテストでグランプリを受賞、20年には執筆したエッセイが日本文藝家協会「ベスト・エッセイ2020」に選出されるなど、ジャンルレスに活動の場を広げている。