【欧州車紀行・北仏1】モン・サン=ミシェルから“モネの家”を巡る車旅を企画したが…
オートマ車レンタル交渉に四苦八苦
が、しかし、初っぱなから難題が降りかかった。これまでも何度か経験したオートマ車問題である。僕はマニュアル車で免許を取ったものの、日本ではオートマにしか乗ったことがないので、マニュアル車の運転の仕方を忘れてしまっている。まして交通ルールが異なる海外で、日本とは逆の慣れない左ハンドルをマニュアルで運転するのはどうにも……。なので、運転は慣れたオートマ車が大前提である。
旅行代理店を通して現地のレンタカー会社に問い合わせてもらったら、レンヌ~ヴェルノンの車を借りることはできるが、案の定、あるのはマニュアル車だけだという。オートマはなし。「4社ほどあたってみたのですが、もっと早く予約を、と言われまして」と担当者。出発は1か月半先。出発直前というわけではない。それでも用意できないのは、そもそもオートマ車を置いていないレンタカー会社が多いからだろう。しかし、これまで海外出発前ギリギリに予約したことはあった。それでも最終的にはOKとなったのに。フランスの車事情、一体、どうなっているのか。
欧州ではマニュアル車信仰が根強い
フランス、イタリア、スペインはまだマニュアル車が幅を利かせている。オートマ車はベンツなどの大きな車がほとんどで、コンパクト車になると、マニュアル車が多い。12年、イタリアのアマルフィを旅した際にも、コンパクトなオートマ車をオーダーしたのに、出てきたのは大きなボルボだったことがあった。アマルフィ海岸は道路がイタリアの中でも狭い。大きなボルボではリスクが大きすぎる。なので、即刻ボルボをキャンセルして、その場に居合わせたガイドにお願いして車で回ってもらうことになった。今や車はEV(電気自動車)や自動運転が普及しつつある。なのに、欧州では脈々とマニュアル車信仰が息づいているから不思議である。
旅行代理店のやり取りは続く。
「EVとか自動運転とかいってる時代に、どういうことかな?」
「最近はあまりレンタカーで回る方もいなくて……。リサーチが不足してまして」
「でも、ないんだから仕方がないね。パリの友人にも相談してみる」
パリにはゆっちゃんのパリ時代からの友人がいて、欧州に出かける時にはいつもお世話になっている。えっちゃんという、大阪出身のマダムだ。
だが、現地にいるえっちゃんにお願いしても、オートマ車が確約されない状態が日本を出発する前まで、いや、運転する当日の直前まで続いた。オートマ車が借りられない最悪の事態! になるかもしれない。
どうなることやら、で始まったフランス北紀行だった。
□峯田淳(みねた・あつし)1959年、山形県生まれ。埼玉大学教養学部卒。フリーランスを経て、89年、夕刊紙「日刊ゲンダイ」入社。芸能と公営競技の担当を兼任。芸能文化編集部長を経て編集委員。19年に退社しフリーに。著書に「日刊ゲンダイ」での連載をまとめた「おふくろメシ」(編著、TWJ、17年)、全国の競輪場を回った「令和元年 競輪全43場 旅打ちグルメ放浪記」(徳間書店、19年)など。