待望の義足デビューを飾った谷津嘉章の波瀾万丈人生 ポジティブ思考を貫いた男の次なる目標は

「義足レスラー」谷津嘉章が「CyberFight Festival 2021」(6日、さいたまスーパーアリーナ)で、2年ぶりにリングに戻ってきた。

戦友となった義足を外してチェックする谷津嘉章【写真:柴田惣一】
戦友となった義足を外してチェックする谷津嘉章【写真:柴田惣一】

「義足レスラー」谷津嘉章が2年ぶりにリング復帰

「義足レスラー」谷津嘉章が「CyberFight Festival 2021」(6日、さいたまスーパーアリーナ)で、2年ぶりにリングに戻ってきた。

 時間差入場バトルロイヤル(15人参加)にエントリーされた谷津。一番目に登場すると、長い花道を、義足(右足)の感触を確かめるかのように一歩一歩、踏みしめて入場してきた。4800人(超満員)の大観衆の拍手が谷津の背中を押している。

 足を切断してから2年。心の準備もないまま、突然の手術、絶望の入院生活、長く苦しかったリハビリ、1980年モスクワ五輪ボイコットからの40年越しのリベンジともいえる聖火リレー……今までの苦難の道のりを思い出したのか、感慨深そうな表情を浮かべている。そして、古くからのファンだろうか。リングインした谷津の姿に涙ぐむ人もいた。

 次々と入ってくるレスラーたちからも、谷津へのリスペクトが伝わってくる。とはいえ、リングに上がったからには、特別扱いは無用だ。チョップを食らい、ヘッドロックで絞り上げられた。

 実戦の感触を取り戻した谷津は、大石真翔にショルダータックルからフロントスープレックスを繰り出す。得意技のブルドッキングヘッドロックも高鹿佑也に爆発させた。なおも平田一喜に「代名詞」ともいえる監獄固めを狙ったが、井上雅央にスキをつかれ丸め込まれてしまった。

 悔しい敗退にも「想定内で終わって良かった」と振り返る谷津。何度も改良を重ねた義足「ヤツ・スペシャル」も実戦で使用するのは初めてとあって、正直、不安がなかったわけではない。外れたり、思い通りに動けなくなる不測の事態もあり得た。

 何もかもすべて杞憂に終わる。義肢装具メーカー川村義肢株式会社には、聖火リレーで使用したランニング用義足でもお世話になった。スタッフと一緒になって、改良を重ねてきた。「いろいろ支えてくださった皆さんに感謝します」という言葉が、自然に口をつく。

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