「NHKスペシャル」を目指した「『宇宙戦艦ヤマト』という時代」 監修が明かす制作秘話
不朽の名作アニメ「宇宙戦艦ヤマト」をリメイクした「宇宙戦艦ヤマト2199」と「宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち」を新たな切り口で再構成した特別総集編「『宇宙戦艦ヤマト』という時代 西暦2202年の選択」が11日から劇場上映される。本作の構成・監修・脚本を手掛ける福井晴敏氏と、脚本の皆川ゆか氏が、今、ヤマトが問いかけるものは何かを語った。
リメイクの特別総集編「『宇宙戦艦ヤマト』という時代」福井晴敏氏&皆川ゆか氏に聞く
不朽の名作アニメ「宇宙戦艦ヤマト」をリメイクした「宇宙戦艦ヤマト2199」と「宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち」を新たな切り口で再構成した特別総集編「『宇宙戦艦ヤマト』という時代 西暦2202年の選択」が11日から劇場上映される。本作の構成・監修・脚本を手掛ける福井晴敏氏と、脚本の皆川ゆか氏が、今、ヤマトが問いかけるものは何かを語った。(取材・文=平辻哲也)
「『宇宙戦艦ヤマト』という時代」はリメイク版シリーズを単にまとめただけではない異色作だ。1969年のアポロ月面着陸から始まる宇宙開拓をスタートに、2199年イスカンダルへの大航海、2202年ガトランティス戦役に至るまで、「2202」を中心に、人類史・宇宙史に刻まれる歴戦をつづっていく。新作「宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち」(21年上映予定)の序章という役割もある。
「絵空事の架空戦記ではなく、『NHKスペシャル』みたいに作ろうと思いました。流れているのは今、あなたが生きている時代の写し鏡ですよ、と伝わるようにしたつもりです。何でもサブスクで見られる時代に、もう1度総集編を映画館で見てもらうには、本編を見た人にも分からなかった視点が必要だと思ったし、これまで見ていなかった人にも、この2時間を見れば、分かるよっていうものを作りたかった」と福井氏は語る。
福井氏は「亡国のイージス」「終戦のローレライ」「機動戦士ガンダムUC」などで知られ、映像作品の構成・脚本などを数多く手掛けている作家。福井氏から脚本のオファーを受けた皆川氏は「福井さんから、前史である内惑星戦争、ヤマトが発進する前の戦いを、新作映像でやりたい、と言われました。最初はまとめるだけで、脚本までは受けていなかったので、この脚本を書く人は大変だろうと思っていたら、しばらくたって、お話をいただきました」と笑う。
総集編の語り部を務めるのは、技術長と副長を兼任する真田志郎(声・大塚芳忠)。MIT首席卒業の秀才で、国連宇宙軍に志願し、ヤマト計画の中枢を任されるという29歳の青年だ。「真田さんはオリジナルのヤマトの時代から、何でも解説してくれる人、不自然でないっていうことが1点。リメイクシリーズの真田さんはコミュ障だったが、人と触れ合う中でだんだん普通の人に共感できる男になるというストーリーラインがある。彼だったら、ヤマトの3年余りの歴史を語れるんじゃないかと思った」(福井氏)。
オリジナルの「ヤマト」(全26話)は74年、日本テレビ系で放送され、77年に総集編が劇場公開。その後、「さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち」(78年)、「ヤマトよ永遠に」(80年)、「宇宙戦艦ヤマト 完結編」(83年)などが作られる一大ブームに。2人にとっての原体験は? 「10歳ぐらいの時、『さらば宇宙戦艦ヤマト』が劇場公開される時に、最初のヤマトをテレビ放送で見ましたね。こんなことがテレビ漫画でできるんだと思った」(福井氏)。「小4の時に74年の本放送を第1話から見ました。ただ、銀河系を出る時の餅つきを見て、未来なのに変だと思って、途中で『猿の軍団』に乗り換えてしまったんですけど(笑)。ただ、世界が滅びかけている物語が怖くて怖くて仕方なかった。ガミラス艦もすごかったし、どえらいものを見た、という感じでした」(皆川氏)。